2010年度入試で何が問われたか<社会>

首都圏の国立・私立中学校のべ120校の2010年度入試問題の分析結果をもとにした、文教大学の早川明夫先生による、社会入試の出題傾向と今後の対策についての解説です。
(以下は、2010年3月に開催された森上教育研究所主催「わが子が伸びる親の『技』研究会」セミナーの講演を抄録したものです)


■問題の形式・難易の分析

(1)記述問題が増加傾向に

まずは、社会入試の問題形式についてです。ここ最近、一行記述の問題も含め、記述問題を出題する学校が増加傾向にあります。2010年度は全体で約8割の学校が出題しています。これは女子校において特に顕著で、女子校だけで見ると9割近くの学校が記述問題を出題しています。

記述問題の内容ですが、多い順に、[1]「理由」を問う問題、[2]資料の読み取りの問題、[3]用語の説明問題です。圧倒的に[1]の「理由」を問う問題が多いです。
記述問題対策は、受験校の過去問分析をするのがいちばんです。麻布、栄光学園、海城、渋谷教育学園渋谷、渋谷教育学園幕張、武蔵などは、ぜひ早いうちに過去問を見ておきましょう。また、女子校では鴎友学園が質の高い記述問題を出題していますので、特に“なぜそうなったのか”その理由を書く訓練が必要です。上記の学校以外は、過去問に取り組んでおけば、特別な記述問題対策はしなくても大丈夫でしょう。

(2)用語の漢字指定も増加傾向に

68%の学校が用語を書く際に漢字指定をしています。問題用紙に「漢字で書くこと」など、明記している学校もありますが、漢字の採点については学校ごとに異なりますので、学校説明会で確認するとよいでしょう。

(3)問題の難易

全体的には易化の傾向にあります。特に今年度の開成の問題は比較的易しく、社会ではあまり差がつかなかったのではないかと思われます。難問の出題校はある程度特定されており、首都圏では埼玉県の男子校に多いです。

<埼玉県の男子校で出題された難問の例> 城北埼玉 大問2-3 問12・問13

「和算」に関する文章を読み、和算の基礎をつくった書物の作者を問う問題。『発微算法(はつびさんぽう)』の著者名は漢字で書くよう指示されている。

このように難しい問題を出題する学校もありますが、難問対策は実はあまり必要ありません。なぜならば、難問では差がつかないからです。基礎・基本の問題ができるかどうかが、合否を決定します。基礎・基本を徹底しておけば、応用もきくようになります。
また、一問一答形式のような、単なる用語の暗記では対応できない問題が増加しています。用語は、いろいろな物事と関連付けながら覚えるとよいでしょう。それには良問にあたることも大切です。良問は女子校に多く、鴎友学園女子、田園調布学園中等部、日本女子大学附属などが練られたよい問題を出題しています。男子校・共学校では、麻布、海城、渋谷教育学園幕張なども良問です。

(4)分野別の出題傾向

社会の3分野(地理・歴史・公民)の出題割合は、以下のとおりです。

地理:歴史:公民=34%:41%:25%

以前はもっと地理の割合が多かったのですが、近年は公民分野の出題が多くなっています。「時事問題」が増加傾向にあるからです。

プロフィール


早川明夫

社会科入試問題研究の第一人者。大学付属中高の教頭を経て、文教大学で社会科の教員養成にあたった。現在、文教大学地域連携センター講師。主な著書に『応用自在』『考える社会科地図』『総合資料日本史』『地図っておもしろい!』(監修・執筆)ほか多数。『ジュニアエラ』の総監修者。

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