計算力を付けるため「計算ドリル」などをしていますが、親がついていないとやりません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小3女子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま


質問

リットル、デシリットルなどの量、時間の計算を、間違えはしないのですが、正答までにずいぶん時間がかかります。たとえるならば、アナログ式で計算しているような感じで、指を使いながら計算しています。
速く計算できるコツを教えようと、これまでに2、3回は親がついて復習させましたが、今も苦手です。ひき算、あまりのあるわり算の計算が特に遅いです。計算ドリルを一緒にしたりしていますが、親の都合でできない時は、当然本人もやりませんので、なかなか力が付くまでには到達していません。


小泉先生のアドバイス

「やった!」という達成感を持たせる工夫が必要。

算数は、問題の演習量によって成績が決まる教科
です。算数のセンスがあまりない子どもでも、問題量をこなすことである程度のレベルまではいきます。問題量をこなすことが、非常に重要な教科なのです。
ところが、計算力がないと他の受験生に比べて量をこなすことができません。同じ時間だけ勉強していても、解く問題数が少ないので、いつまでたっても追いつかない、そればかりか離されてしまいます。それだけ計算力は重要であり、4、5年生になる前に、速く正確に計算できる力を身に付ける必要があります。そのためには、単位にしても四則計算にしても何回も練習する必要があります。しかし、お子さまは自分から勉強しようという気持ちがまだ起きていないようです。小学3年生ですからしかたないとも思いますが、何かお子さまのモチベーションをアップさせる工夫が必要だと思います。

算数の計算や漢字の練習などの基本学習は、コツコツ勉強するのが苦手な子どもにはつらいかもしれません。毎日15分から20分、歯を磨くのと同様に、やらないと気持ち悪いくらいの習慣になるとしめたものですがなかなか難しい場合もあります。そんな時は、「やった!」という達成感を持たせる工夫が必要です。たとえば、チェックテスト方式で一覧表を貼り出すことなども一つの方法です。

用意するものは、お子さまに該当する学年用の計算問題集と、一覧表。問題集は、1回10分程度の制限時間で数十回分あり、徐々に難しくなっていくものがよいでしょう。一覧表には計算問題の回数だけのマスがあり、合格点(たとえば80点)をとれたらその回には合格シールを貼ってあげます。合格にならない回はさらに挑戦して、合格にしてもらいます。おもしろいもので、一覧表にシールが増えてくると、お子さまは「やったなあ~」という達成感を味わえることでしょう。そして、合格シールが抜けている箇所は、どうしても気持ちが悪くなってシールを貼りたくなるものです。

保護者のかたがすべきことは、お子さまが仕上げた答案を採点して、合格なら合格シールを貼るだけです。最初はともかく、そのうちやっているところを見ている必要もなくなるでしょう。もちろん、制限時間内で答案を仕上げることは大切ですが、多少なら時間オーバーが出てしまってもかまいません。ただし、シールは必ず保護者のかたが貼ってあげましょう。ここまでお子さまにやらせると、しらけてしまいます。保護者のかたが貼ることで、「ここまでやったんだ!」ということを公式に認められたことになり、それがモチベーションにつながるのです。1冊まとまった教材を使うことで、「これを仕上げる」といった明確な目標を示すと効果的でしょう。

シールや一覧表などは、大人にとってはつまらないものかもしれません。しかし、子どもをやる気にさせるきっかけになる場合が少なくありません。そして、そのようなものが不要になった時は、恐らくお子さまが自分からやらねばならないと自覚した時なのです。受験の主体が、保護者のかたから受験生本人に移行した瞬間といえるでしょう。その瞬間をめざして、さまざまな工夫をする必要があります。少々面倒ではありますが、中学受験が親子による二人三脚の受験と呼ばれる由縁がここにあると思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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