計算力・暗算力が広げる子どもの可能性

EdTechやICT化で子どもの学び方にも変化が起ころうとしています。それは、計算の分野でも例外ではありません。
そろばんから着想を得た「そろタッチ」というアプリを開発し、そろタッチ教室を運営されている山内千佳さんに、計算力が広げる子どもの可能性について伺いました。

そろばんは視覚的に数字を捉えやすい教具

私が計算力や暗算力に注目したのは、外資系銀行で働いている時でした。当時、金融商品の開発やトレーディングに関係する仕事をしていたのですが、「アバカス(英語でそろばんという意味)」と呼ばれていた同僚がいました。当時、金融のテクノロジーも進んでいたため、トレーダー自らが計算を行うことはあまりありません。しかし、大きく市場が動いた時などには、一瞬数字が飛んでしまうことがあります。そんな時に頼りになるのがアバカスの存在です。
彼はあだ名のとおり暗算の達人。自分の頭の中に数字の軸を持っているため、自ら瞬時に計算をして対応することができるのです。テクノロジーの進化の一方、いざという局面では自分で数字を捉えることが有利になるのだと目にした瞬間でした。

こうして暗算の威力を目の当たりにした私は、我が子にも暗算が得意になってもらいたいと思い、そろばんを始めました。幼稚園の年長さんくらいの時でしょうか。
買い物に行った時に「これとこれで○○○円だね」という言葉が出てきたり、「今日は先生の24歳の誕生日よ」と言った先生に「じゃあ先生は1985年生まれなんだね」と返したりした時は、我が子を天才と思ったものです(笑)。
それからは、そろばんや暗算の魅力にのめりこみ、そろばん教室を開いたり、そろばんを発展させたアプリ「そろタッチ」を開発したりしてきました。

そろばんは、「5の固まりの珠」と「1の珠4つ」を使って計算をしますが、これは視覚的・直感的にものを捉えるのにとても優れているといえます。
というのも、たとえば、5という抽象的な数の概念を理解するには、「ここにりんごが1、2、3、4、5個あります」というように具体的なモノを思い浮かべながら考えることが有効とされているように、数という抽象的な概念を珠という具体的なモノでイメージすることができるからです。

「そろタッチ」は、そろばんと同じように、「5の固まりの珠」と「1の珠4つ」を使って計算を行います。そろばんや、「そろタッチ」を使ってお子さまの暗算力を伸ばしたいという保護者のかたには、5歳くらいから始めることをおすすめしています。

5歳くらいのお子さまは、イメージ力が旺盛で、頭の中に珠の形をイメージするのが得意だからです。加えて、「筆算」の概念がないというのも大きな理由です。
小学校に入り筆算を習い始めると、珠をイメージするのがどうしても難しくなります。そういう意味では、5~8歳くらいで習い始められるといいですね。

計算力をいろいろなことにチャレンジする土台にしてほしい

現在、思考力や問題解決力といったような非認知能力が注目されている教育の中で、「計算力を鍛える」というと、それがいったいどんな可能性につながるの?と疑問に思う保護者のかたもいらっしゃるかもしれません。

単純に、計算が速くなることで、算数のテストの<問1>の計算問題を早く終わらせることができるため、他の文章問題などに使える時間が増え、算数が得意になったという話もあります。また、答えが明確な算数というのは、保護者のかたやおじいちゃん・おばあちゃんなど、誰にでも認めてもらいやすい教科だということもできます。

しかし、私は、計算力や暗算力はあくまで学びの土台になるものだと考えています。計算や算数で自信が付いたら中学受験にチャレンジするというのもいいでしょうし、算数ができるようになったら、他の教科の成績も伸びたという話もとてもよく聞きます。なにか一つ、お子さまが自信を持って取り組めるものがあり、それを認めてもらえると、他のことにもチャレンジしようと思えるでしょう。計算力はそのための土台作りだと思っていただきたいのです。

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執筆者プロフィール

山内千佳(やまうち ちか)

神奈川県生まれ。東京女子大学文理学部数理学科卒業後、1989年日本興業銀行入行。1993年からCitibank東京支店にてデリバティブ商品のトレーディングと商品開発業務に従事する。2009年、株式会社Digika設立。2011年に珠算教室「かるトレ」開校、2014年ママスタッフとともに「そろタッチ」を考案し、開発を進める。2019年4月現在、国内外に約70教室、生徒数約2,000名。自ら子育てを実践しながら、国内外の教室や大学、イベントをまわりながら、これからの世界に必要とされる能力——「暗算力や算数・数学的思考力」の育成・活用を日々探求している。

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