文章の記述が苦手です。言葉の言い換えができないのかもしれません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6男子(性格:大ざっぱ・強気なタイプ)のお母さま


質問

文章の記述が苦手です。読んだ文章から抜き出して書くことはできますが、自由に書くことができないようです。言葉の言い換えができないのかもしれません。


小泉先生のアドバイス

「言葉の言い換え」は極力避け、解答として許容できる範囲の答案を作成。表現力を磨くのは次のステップ。

「言葉の言い換え」とは、問題文に書かれている内容を他の表現で表すことであり、表現力の有無が問われる難しい作業です。うまく言い換えたと思っても、実際には意味が違ってしまう場合も少なくありません。特に中学受験の場合、大人が書いた文章を小学生の皆さんが言い換えるわけですから、難しいのも当然です。しかし、実は本当の意味で「言葉の言い換え」が必要な記述問題はそんなには多くはないようです。実際、私が子どもたちに記述問題を指導する場合、「言葉の言い換え」は極力避けるように言います。今回は、このような「言葉の言い換え」について考えてみましょう。

まずは、物語文の記述問題における「言葉の言い換え」について。物語文では、登場人物の気持ちも問われます。問題文の中には心情表現という形で書かれている場合が多いので、そのまま文を写すだけでは答案はつくれません。心情表現から、登場人物の気持ちを推測する必要があります。しかし、心情表現とは“決め事”なので、「表現力」というよりも、知っているか知らないかの「知識」の問題と考えてよいでしょう。そう考えれば、心情表現の意味を一つひとつ覚える必要はありますが、物語文では本来の意味での「言葉の言い換え」はあまり必要ないといえると思います。まずは、解答として許容できる範囲の答案作成を心がけましょう。

次は、説明的文章の場合について。説明文の問いは、「なぜ問題(理由を問う問題)」や「こと問題(内容を問う問題)」がほとんどです。いずれも問題文の内容の活用で、すなわち“文章のある部分をそのまま写す”ことで十分に答案がつくれることが多いでしょう。つくった答案は、模範解答に比べて多少ぎこちないかもしれませんが、まずはこのレベルをめざしてください。満点ではないかもしれませんが、最初はある程度の答案で満足したほうが結果的には上達が早いと思います。ただし、問題文の文章をそのまま使うと日本語としておかしくなることがあるので、言葉の順番や「て・に・を・は」には十分注意しましょう。もちろん、これらも「言葉の言い換え」と呼べるようなレベルのものではないとは思います。

それでは本格的な「言葉の言い換え」が必要なのは、どんな場合でしょうか。たとえば、本文における使いたい部分が大きく(たとえば200字超)、それに対して答案の字数制限(たとえば50字以内)が厳しい場合を考えてみましょう。こんな場合は、使いたい部分で特に重要なところをいくつかピックアップして組み合わせます。下手に組み合わせると、本文の内容とは意味が違ってしまうので要注意です。しかし、大切な部分を抜き出して組み合わせるだけですから、本当の意味では「言葉の言い換え」とは呼べないかもしれません。なぜなら、本来の「言葉の言い換え」とは、本文の内容を別の言葉で表現するという作業だからです。

このように考えていきますと、記述問題といえども、本格的に「言葉の言い換え」をすることなく答案を作成できることがおわかりになったと思います。本文の内容を活用し、最初はまずまずの答案を作成することをめざしましょう。そして、「言い換え」ができるまでの表現力を磨くのは、次のステップと考えてよいでしょう。具体的な方法としては、まずまずの答案が書けるようになったら、模範解答と自分の答案を比べて模範解答がいかに上手に書けているかを味わってください。そして、もし「言葉の言い換え」などですばらしい表現があればそこで自分のものにしてしまうのです。表現力が付いて、徐々に合格点を超える素晴らしい答案が書けるようになると思います。通常の記述問題の答案作成より、ひとつ上の学習といえるでしょう。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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