2017/03/15

[第2回] 世界のコンピテンシー育成の流れから見た日本の強みと示唆 [4/4]

Q. コンピテンシーが育つために、教員や保護者は何をすればよいのでしょうか?

A. まずは手放してみること。その上で気づきを促してあげることが大切です

 まずは、子どもが主体的になる余地をどう作るのかが、今、問われていると思います。大人たちがよかれと思ってしていることが、実は与えすぎていたり、準備をしすぎていたりすることが往々にしてあります。子どもたちは、ある一定の知識やスキルがあれば、大人が思っている以上に自分の力や知恵でできるものです。子どもに何と深くかかわらせたいのかをよく考え、主体的に学べるようにする必要があります。答えを与えてしまうことは、子どもに学ばせようとしないことと同じになるのです。質のいいヒントこそ大事です。
 また、試行錯誤の結果として、失敗やつまずきの経験から学べることが大きいことが分かってきています。ただし、何かを経験しても、「楽しかった」だけで終わったら学べることは多くありません。困難や失敗を経験すればよいわけではなく、どうしてこの活動が必要なのかを問い直したり、自分にとって大事なことを見つめ直したり、次の活動の見通しを持ったり、誰に助けを求めるべきかを考えたりと、子どもの内面で振り返りやさらなる探究のきっかけとなる経験が育ちにつながっていきます。
 そのためには、子どもが挑戦する状況をつくることが大切です。その際、踏み台を用意してあげることも大事ですが、ある段階に来たら手を放して子どもに任せてください。踏み台の高さが足りなければ、子どもは自分でどうすればよいのかを考えるようになります。また、子ども同士で考え合うことで、どうすれば友だちが分かりやすいかを考えたり、共に解決して喜びを分かち合ったりすることができるなど、対話の中で気づきを得たり、学びを深めることができるのです。

【メッセージ】学びはダイバーシティ。一人ひとりがかけがえのない存在として、共に学んでほしい

 学びは一人では成り立ちません。教材や他者とのかかわりを通して学びを得られる「学び上手」になってほしいと思います。それは子どもだけでなく、教員も同じです。
 世界的に教育改革の機運が高まっており、教員にとっても子どもにとっても、今が学びを転換する大きなチャンスです。カリキュラムを開発し見通しをもちながらも毎時間の授業を大事にして、子どもたちに生涯を通して学び続けていける資質を育ててあげてください。「友だちと一緒に学べてよかった。面白かった」「自分が受け入れられてうれしかった」と、子どもたちが感じられる授業をしていただきたいと思います。
 教員も子どもも、一人ひとりがかけがえのない存在です。価値観や考えが異なる人がいるからこそ、深い学びが得られるのです。そうしたダイバーシティ(多様性)の考え方を大切にして、子どもも教員も安心して過ごせる、学びやすい学校づくりに取り組んでほしいと思います。
※ベネッセ教育総合研究所では、これから求められる資質・能力とその指導・評価に関する研究を行っています。【アクティブ・ラーニングを活用した指導と評価研究】