江戸川大学 メディアコミュニケーション学部 こどもコミュニケーション学科(2)言葉を信頼する人間を育てるために [大学研究室訪問]

日本が転換期を迎えた今、大学や学部でどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。「言葉を生みだす教育」を研究している江戸川大学メディアコミュニケーション学部 こどもコミュニケーション学科の浅川陽子教授の研究をご紹介します。「言葉を交わす学び合い」が人にもたらす影響と、言葉の力を信じる人の育成についてお聞きしました。



■言葉の力を信頼する保育者・教育者を育てたい

育ってきた環境の中で、不幸にも親や教師から言葉で低く評価されたり、友達から言葉で傷付けられたりしてきた子どもたちは、言葉を信じず言葉を使うことを躊躇(ちゅうちょ)しがちです。一方で、言葉で心地よい思いをし、言葉で表現する喜びを知っている人は、言葉の力を信じることができます。「言葉の力を信じることができる」ということは、自分の言葉を相手に伝えることで満足感を得たり、理解し合えたという成功体験を持っていたりし、言葉の力を実感として知っているということです。そして、言葉の力を信じられるようになると、自分や他人を信頼し、人とつながることを恐れなくなります。
大学での学びの中で、言葉の重要性に気付いた学生にも同じことがいえます。自分と同じように他の人にも伝えたい言葉や大切にしたい人がいることを想像できるようになるため、他人の言葉を大切にできるようになるのです。言葉への信頼感は、人と協働するための原動力となり、社会に出て結実することでしょう。
江戸川大学 こどもコミュニケーション学科では、幼稚園教諭と保育士の資格を取得することができます。私は読み聞かせの実践や自分史を書く授業などを通じて、言葉の持つ力を信じ、子どもの言葉を大切にする教育者を育成したいと思っています。

また、4年間かけて幼児教育や保育について深く学び、専門的なバックグラウンドを持ってほしいとも思っています。人を育てるという仕事には、終わりがありません。一生探究し続けていく「研究の芽」を大学時代に養っていくことが、保育・教育の専門家として生きていくうえで重要だと思うのです。


■保育を学ぶ学生の素養とは?

各自が工夫して、制作した『詩のアンソロジー』

本校には、中高時代にインターンシップやボーイスカウト・ガールスカウト、習い事などで小さい子どもとふれ合った経験があり、子どものかわいらしさや不思議さを知って入学してくる学生が多いです。男子学生が学科の3分の1を占めることも特徴ですね。幼稚園教諭や保育士は、今後ますます需要が高くなる仕事です。子どもの魅力にふれて、楽しさを実感した人は、男女問わずに保育や幼児教育に関わる仕事を志してみてはいかがでしょうか。
また、子どもとふれ合う仕事に従事するためには、根本的な明るさや朗らかさを持っていることが大切です。何かあってもへこたれず楽天的なくらいに子どものことを信じ、いつ花開くかわからない種を注意深くまき続けられる人に、保育者となる夢を持ってほしいと思っています。


■教員同士の学び合いの姿を見せ 学生に学び合う大切さを実感してもらう


言葉を交わす学びの軸には、異なる特性を持った人同士の学び合いがあります。学び合いの姿については、教師と学生は相似形だと私は思っています。子どもは、大人の姿を見て真似をするものですよね。学び合いでも同じことです。学生たちに学び合いの大切さを教えている私たち教員たちが、自らその意義を伝えられるようにしていく必要があるのです。
大学の教員は、専門家としての独立性・独自性を大切にしています。しかし、そこに留まっていてはなりません。異なる専門性を持つ教員同士が殻を破り、いくつになっても真摯に学び合う姿勢を示していかなければ、学生たちに協働する学びの意義を実感してもらうことは難しいと思うのです。
そのため、保育園での読み聞かせを初めとする各種の学内共同研究に一層力を入れて、各教員の専門的な知見をシェアし、互いに学び合う関係を築いていく予定です。私はこれを「教えと学びの共同体」と呼び、そんな関係性を実現できる学科づくりを目指しています。



■他人の立場を思いやり 学び合いながら仕事を進められる人を育てたい

社会に出ると、自分とは異なる年齢、役職、立場、意見の人々と出会うことの連続です。そんな時に、「自分とは違うから」と心を閉ざしてしまっては、円滑に仕事を進めていくことも、自分を成長させることもできません。社会で生き抜くには、他人から学び、自分の身になるようにしていく素地、そういう関係性を創る力が必要です。また、自分の考えはきっと受け止められるということを信じて、他者に意見を伝えていけるような粘り強いコミュニケーション力が大切です。
たとえば、保育や幼児教育の現場では、ベテラン保育士と社会に出立ての保育士とでは、観点や考え方がまったく違います。園の組織力を高めるには、先輩から言われたことを素直に受け止める一方で、自分の思いや考えを率直に伝えられる人が求められます。
これからも、他者から学び、自分の言葉を伝えられる社会人を育てる教育に注力していきたいと考えています。


プロフィール


浅川陽子

お茶の水女子大学大学院 人間文化研究科修了。子どもの発達とことばの学び、児童教育、教師教育、幼保小連携などについて研究。著書に、『ことばの生まれ育つ教室--子どもの内面を耕す授業』(共著/金子書房)など多数。

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