早稲田大学 スポーツ科学部(1) スポーツビジネスを通じて世界で活躍する人材を育てる[大学研究室訪問]
日本が転換期を迎えた今、大学もまた大きく変わりつつあります。そんな時代に、大学や学部をどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。答えを求めて、さまざまな大学の研究室を訪問します。連載11回目は、サッカーのW杯招致、なでしこジャパン誕生などに携わった早稲田大学の平田竹男教授の研究室です。テーマはトップスポーツビジネス。野球の桑田真澄さんや水泳の平井伯昌コーチも学んだ研究室では、どんな学びが行われているのでしょうか。
■Jリーグやプロ野球の最前線の現場を訪ねる
私のゼミのテーマは、トップスポーツビジネスです。学生たちは、国内外を問わず、サッカークラブやプロ野球球団、広告代理店、スポーツメーカー、マネジメント会社、スタジアムなど、さまざまな最前線の現場を訪ね歩いて、どんな課題があり、どうすれば、強くて人気があり、赤字のないリーグやクラブができるのかを学んでいきます。
優秀な選手や指導者を集めても強いチームができるとは限りません。トップスポーツチームの経営は政治や経済と深く結び付いており、私は必ず、学生たちにそうした背景を調べさせます。また、イギリスの有名クラブをアメリカの企業が買収するなど、スポーツビジネスは国境を越えてダイナミックに動いています。スポーツビジネスを学ぶことは、世界の政治・経済事情を深く知ることでもあるのです。
■飛躍的に発展したサッカーから学べば、学生たちにも勇気や力が漲(みなぎ)る
最近20年間の日本で、サッカーほど輝かしい成功を収めた分野はありません。人気も実力もマイナーだったのが、Jリーグが発足し、W杯を開催し、海外の一流クラブで何人もの選手が活躍し、女子のなでしこジャパンが世界一に輝くなど、飛躍的な発展を遂げ、多くの人たちに勇気や力を与えました。私自身、通商産業省(現・経済産業省)の官僚や日本サッカー協会の一員として、そこに深く関わってきました。
2011年のマレーシア合宿でアジアサッカー連盟を訪問
今の日本の若者の多くは、高度成長期に育った私の世代とは違い、自信がなく、夢を抱けずにいます。しかし、サッカーという明るい材料で学ぶうちに、勇気や力が漲(みなぎ)り、「やればできる」という気持ちになれます。私も学生たちを間近に見ていてそう実感しています。今の日本の大学で、多くの学生にそんな力を与えられる分野は、他にないでしょう。ゼミ合宿で毎年アジアに行っているのも、今の日本に失われた、明るく前を向いて成長していく雰囲気を感じてほしいからです。
■「食べさせてもらう」でなく、「引っ張っていく」気概を
私には、スポーツビジネスの専門家を養成するつもりはありません。ゼミの卒業生は、金融・製造業をはじめ幅広い分野に就職し、活躍しています。法学部で法律を学んだ学生が法律以外の分野で活躍するのと同じことです。大学とは、興味の持てることを通じて脳のしわを増やす場所です。スポーツビジネスは、多くの学生が積極的に取り組め、社会人として幅広く役立つ力を育てられる分野なのです。
スポーツビジネスの仕事志望の学生にも、卒業後すぐ関連団体に就職することはすすめていません。私自身の経験から、むしろ、他の分野で視野を広げ、力を付けるべきだと考えるからです。大切なのは、会社や業界に「食べさせてもらう」のではなく、自分が「引っ張っていく」気概です。そのために自分に何が必要なのかを考え前に進んでいく--そんな視点や姿勢を持ち、世界を舞台に活躍してほしいと願っています。
卒業生に聞きました! |
福島 翔太さん(2012年度卒業、三菱商事RtMジャパン株式会社勤務) |