苦手な図形問題を好きにさせる方法はありますか?[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

算数の図形全般が苦手で、問題そのものをやりたがりません。テストでさえ問題を解かないことがあります。図形を好きにさせる方法があれば教えてください。

相談者:小5男子(理論的なタイプ)のお母さま



【回答】

つまずいている分野・単元の、持久力に合ったレベルの問題から


■自分で「解けた!」という達成感を

好きにさせるには、やはり、自分で「解けた!」という達成感を味あわせることでしょう。これが継続的に得られれば、算数の図形問題はもちろん、他のどんな教科の勉強でもそんなに苦痛ではないはずです。しかし、解けるようになるためには、算数の力を付ける必要があります。力を付けるには多くの問題をこなす必要があります。でも、苦手で嫌いだから図形の問題はやりたがらない……。これではイタチゴッコで、いくらたっても好きにさせることはできません。でも、少し考えてみましょう。お子さまは最初から図形が嫌いだったのでしょうか? 最初からとは、もっと低い学年からです。恐らくそんなはずはないでしょう。どこかで嫌いになった瞬間があったはずです。そして、そのつまずいたところからやり直していけば、図形問題に対する苦手意識がなくなり自然に好きになっていくでしょう。


■図形問題の分野・単元と問題のレベル

図形分野の問題は次の3つの分野に分かれていて、「図形の性質」→「平面図形」→「立体図形」の順番で(あるいはその順にスパイラルで)学んでいくのが一般的です。そして、それぞれの分野はさらにいくつかの小さな単元に分かれており、各単元における習得すべき内容(定理・公式・解き方など)を「例題」によって理解していきます。次に、得た知識を定着させるために「基本問題」を演習していきます。この「基本問題」は、「例題」程度かそれよりも少し易しいくらいの問題が多いでしょう。そして十分に解き方がわかったら、「練習問題」を演習することになります。この中には応用問題も含まれており、場合によっては簡単な入試レベルの問題も入っています。そして、それが十分解けるようになれば、最後は「入試問題」やその中でも難問と呼ばれる問題に挑戦することになります。「例題」から「入試問題」まで、難度が増していく各レベルの問題をこなさなければ算数の力は付きません。お子さまはこれらの分野・単元のどこかでつまずいていると思われますから、そこを復習する必要があるのです。


■つまずき箇所の見つけ方

さて、「つまずいているところをいかに見つけるか?」という問題ですが、やはり中学入試の算数にある程度精通しているかたに見てもらうか、それが難しければ、今まで受けてきた模試のデータをチェックするとよいと思います。模試のデータには各問題の分野・単元と全体の正答率が載っていると思いますので、お子さまの正誤と共に一覧にしてみましょう。1回の模試ではわかりませんが、いくつもの模試から多くのデータを集めると、お子さまがどの分野・単元でつまずいているかがわかってきます。

データの見方ですが、全体の正答率がその問題の難易度となります。つまり、正答率50%の問題は平均的な問題で、パーセンテージが小さくなってくれば難問、逆に大きくなれば易しい問題ということです。苦手ということですから、図形問題では正答率が50%以上の易しいものでも、お子さまが間違えている問題は多いと思います。しかし、その分野・単元に戻って学び直していけば苦手は克服できるでしょう。


■持久力も関係してくる

このように、苦手を克服するにはつまずいているところから始めればよいのですが、もう1つ考えなくてはいけないことがあります。それは、お子さまの図形問題に対する持久力がどのくらいあるか?ということです。ここでいう持久力とは、わからない問題でも集中して考えることのできる時間です。たとえば、解けないと5分で投げ出してしまうのか、あるいは30分以上でも集中して考えられるかということです。恐らく苦手な図形の問題に対する持久力はあまりないと思いますから、つまずいている分野・単元から、しかもお子さまの持久力が耐えうるレベルの問題から始める必要があるでしょう。

つまり、通常は実力よりちょっと難しい問題を与えるのがよいとされていますが、図形問題の苦手意識が強いので、投げ出さないレベルを十分に演習してから、もう少し難しい問題にとりかかるほうがよいということです。そして、「ちょっと難しいが何とか解けた」→「解けてうれしい」→「少し自信が付く」→「さらに難しい問題をやって何とか解けた」→「解けてうれしい」→「ますます自信が付く」……という理想的な上昇サイクルの突入を目指しましょう。恐らく今は、「難しい問題」→「できない」→「嫌になる」→「難しい問題」→「さらに嫌になる」という負のスパイラルに陥っていると思いますが、前述のような学習を進めることで、この負のスパイラルを断ちきってください。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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