図形や速さなど、自分の目で直接見て確認できないものについては理解が遅い[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小6女子(性格:神経質なタイプ)のお母さま
質問
計算問題は得意です。しかし、図形や速さなど、自分の目で直接見て確認できないものについては理解が遅いようです。これも一定の解き方を覚えて、それに当てはめてしまえばいいと思うのですが、1回、1回、公式を自分で出してから、問題を解いているようです。列車がすれちがう問題などは覚えてしまえばいいのに……と見ていてイライラします。
小泉先生のアドバイス
絵や図を使ったり、体験と重ね合わせたりして問題をより具体的にとらえる。
次のような、簡単な通過算の例題を使って考えてみましょう。
例題
毎秒30mの速さで走っている長さ130mの特急列車が、毎秒20mの速さで走ってきた長さ120mの普通列車とすれちがいます。すれちがうのに何秒かかりますか。
まず、お子さまは「1回、1回、公式を自分で出してから、問題を解いている」ということですが、それは以下のように問題を解いているということでしょうか。
〔お子さまの解き方〕
速さの公式は、
時間=道のり÷速さ
これより
すれちがう時間=列車の長さの和÷速さの和(通過算の公式)
例題に当てはめると
列車の長さの和=130+120=250(m)
速さの和=30+20=50(m/秒)
すれちがう時間=250÷50=5(秒)
(答え)5秒
あるいは、「時間=道のり÷速さ」を求めるのに、「道のり=時間×速さ」から考え始めているのかもしれません。このように公式を自分で出して問題を解いていては、確かに時間がかかります。しかし、「一定の解き方を覚えて、それに当てはめてしまえばいい」というのも、かなり乱暴に聞こえます。
文章題を解く時も、まず問題の内容を十分に理解することが大切です。「条件」や「求めるもの」をしっかりつかむために、線部図や絵図を描くとよいでしょう。今回の問題なら、下記のような絵図が描けます。もちろん実際に描く場合は、もっとざっくりとした絵でよいでしょう。
何がどうなっているのか、何を求めればよいのかがわかれば十分です。このような絵を見れば、「すれちがいの距離」とは、「普通列車の長さ+特急列車の長さ」であり、「すれちがう速さ」とは、それぞれの列車の「速さの和」であることがわかります。また、互いにすれちがうのがイメージしにくければ、まずは普通列車が止まっている場合を考えればよりわかりやすいかもしれません。
このような絵を何回か描いて、問題の中で何が起きているのかを具体的かつ視覚的につかむことが大切です。そうしておけば、問題が難しく複雑になってきた時でも、対処が可能になります。もちろん、今回のような簡単な問題の場合は、上記のような絵を頭の中だけで描いて、実際には紙に描かなくてもよいでしょう。要は問題の内容を理解することですから、単純なものならわざわざ紙にかく必要もなくなるほどイメージ化できるようになると思います。ただしそれは、何回か絵図を描いたあとであり、その手間を省いてすぐに公式に当てはめてしまうのは困ります。先ほど述べたように、問題が難しくなってくると公式に当てはめるだけでは解けなくなってしまうからです。
それからもう1つ。お子さまは、「1回、1回、公式を自分で出してから、問題を解いている」ということですが、「通過算」に使うような簡単な公式を自分で出すということは、「速さ」を実感としてとらえきれていないように思えます。単に公式を暗記しているだけで、十分に使いこなせていないということです。ここで実感としてつかむとは、たとえば「100キロの道のりを時速50キロで行けば、2時間で目的地に着く」ということを体感することです。車で旅行に出かけ、時速50キロというスピード、2時間という時間、そして実際に100キロという距離を体験して意識できれば、「速さ=道のり÷時間」という言葉の公式ではなく、「100(キロ)÷2(時間)=50(キロ/時)」の関係を直観的に使えるようになるでしょう。
「比」や「立体図形」など、なかなかイメージしづらいものも確かにあります。しかし、絵図や線分図を上手に使うことや実際の体験を重ね合わせることで、問題をより具体的にとらえることが可能になります。算数を上達させるための1つの方法だと思いますから、ぜひ実践してみてください。