将来不安を反映か? 進学実績の公立中高一貫校VS授業の質で勝負の私立
リーマンショック以降、受検者が減少していた中学受験が、今再び注目されてきている。その背景にはグローバル化などの社会変化や、不況による将来不安などがあるようだ。ベネッセ教育研究開発センター主任研究員の樋口健氏が、同センターで行った「中学受験に関する調査」(首都圏の公立小学校3~6年生の子どもを持つ父親・母親5,256名を対象、2012年9月実施)の結果を元に分析する。
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今回の調査で注目すべきは、受験させる保護者の3割強が第1志望にしている、公立中高一貫校。実は今、文部科学省による中高一貫教育の推進政策によって、公立中高一貫校がほぼ毎年のように増え続けています。首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)の学校数(中等教育学校・併設型)の推移を見ると、2003(平成15)年ではたった1校だったのが、2012(同24)年には15校にまで増加。それも首都圏では公立高校の進学校が中高一貫校になるケースが多いので、将来の進学を考える幅広い層で志望の割合が増えています。ただ、学校数が増えているとはいえ、絶対数は少ないこともあり、競争率は高めというのが現状です。
一方、私立中学校を第1志望にしている保護者が中学校を受験させる理由は、「質の高い教育が受けられるから」(公立中高一貫校第1志望者も同様)。大学進学に向けてのカリキュラムが充実していることよりも、毎日の授業の質が重視されているのです。
少子化が進む一方、公立中高一貫校という強力なライバルの増加で、多くの私立校は生き残りをかけた《中身の充実》に努力を重ねています。たとえばグローバル化を見据えた留学システムの整備をしたり、大人顔向けの卒業論文を書かせたり。ある私立中学校では、教科書に書かれていることだけではなく、教師にとっても未知の世界を、ICTという通信環境を駆使して、生徒自身に研究させるという探求型の授業を行っています。各校は試行錯誤して、今まで以上に付加価値のある取り組みを行っているのです。