豊かな言葉を育むために イラストをもとに詩を作る国語の授業[こんな先生に教えてほしい]
毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見ています。そして、先生方から授業への想いを聞いています。
小学生から高校生、そして、先生や保護者のかたに役立つ教育番組を制作するためです。その中で、「こんな先生に教えてほしい」と思った先生方のことを書かせていただきます。
AI先生の国語の授業です。AI先生は、子どもたちの言葉を育むことに力を入れています。それは、言葉の力が、人間関係づくりに役立つと考えているからです。そのために効果的なのは、詩の学習だと言います。
今回、取材したのは、3年生です。授業は、先生手作りの一枚のイラストを配ることから始まりました。
そこには、何本かの花が描かれています。水をもらっているのは1本だけ。困った顔をした花もいます。いずれも、子どもたちの気持ちをくすぐるための工夫が施されています。
先生は、「絵を見て面白いなと思うことは? さあ、いくつ見つけられるでしょうか?」と言うのです。
上手だな……と思いました。「いくつ見つけられるでしょうか?」
子どもたちの意欲をかき立てる言葉です。
子どもたちは、イラストの印象をそのまま言葉に表し始めます。やがて最初の勢いが落ち着いたころを見計らって、先生は「色を塗ったり、何か描いたりしてもいいですよ」と言うのです。文字を書く以外の作業は、子どもたちの発想を広げるきっかけになります。たとえば、大きな花の花びら一枚一枚に違う色を塗ったり、雲や太陽を書き加えたりしながら、新たなストーリーを思いつく子もいます。気付いたことは、みんなの前で発表します。
先生は、すべて子どもの発言を黒板に書き留めます。
・子どもが水やりをしている
・男子がニコニコ
・おひさまがポッカポッカ
・小さい花にもあげなくっちゃ
・一番大きな花ばかり水をやってずるい
・「大きくなったね」
・小さい花の顔はかなしそう
・花に顔がある
・水をもらっていい気持ち
・枯れている花からあげているよ
・困った顔のひまわりさん
・でかいよ
・葉を手のように動かしているよ
・人より大きいね
・花が笑って、男の子もうれしそう
・はしっこの花は……
・まわりの花は、こまっている
次に、このクラス全員で考えた言葉を組み合わせて、詩を作ります。
まずは、先生がお手本を見せます。即興でモデルを見せられるのは、達人の先生の条件のひとつです。
AI先生の即興の詩が出来上がりました。
困った顔のひまわりさん
男子がニコニコ 水やり
おひさまがポッカポッカ
一番大きな花ばかり ずるい
枯れている花からあげているよ
小さい花にもあげなくっちゃ
小さい花の顔はかなしそう
葉を手のように動かしているよ
はじっこの花やまわりの花は……
「実感のこもった言葉を感じたままに組み合わせていくと詩ができる」
このことを先生は、子どもたちに示しました。
自然に、子どもたちのえんぴつは、動き出します。
AI先生は言います。
「何もないところで、詩を書くのは難しい作業。だから、子どもたちの中に書くための心・体・言葉の準備をすることが必要。さらに、感じるものがあって、伝えたい相手を意識させる。すると、自然と自分の中からわき出してくる」
それらを「狙って、待てる」先生は、授業の達人だと思います。
最後に、番組でも取り上げた子どもたちの作品を紹介します。
「月とお日さまとひまわり」
くもが月とお日さまをかこんで
わらっている
でも 朝に月があるから
「ちょっとおかしいな」
とおもう男の子がいる
男の子は大きい花にしか
水をあげていない
気がついたように男の子が言った
「小さい花にもあげないと」
それで
右と左の花に水をあげた
やっと 右と左の花の顔がわらった
とてもうれしそうだった
男の子もひまわりも
とてもうれしそうだった
「大きくなったね」
でかいよ
おひさまがポッカポカ
でかいひまわりだけずるい
小さいやつにも水をちょうだいよ
水をくれんとかれちゃうんだもん
いっぱい水をちょうだいよ
「小さい花にもあげなくちゃ」
野原に4本の花
人より大きいよ
あ、1本枯れそうな花がある
男の子が水をやりに来た
大きな花からあげている
一番大きな花ばかり
小さい花にもあげなくちゃ