家庭における「ピア効果」[中学受験]

家庭で兄・姉の学力と意識・意欲が高ければ、受験生の子どもに「ピア効果」が働くことが考えられる。このごろは、少子化で一人っ子も多く、2人きょうだいはまだしも、3人きょうだいはまれである。子どもが複数いる家庭では、まず第一子を学力と意識・意欲の高い子どもに育てることができれば、次の子どもには「ピア効果」が働くことになる。つまり、下の子は、上の子を見て育つので、遊びたいと思う子どもの気持ちをおさえて勉強させる必要もなく、本人が受験勉強をするのは当たり前だと思うのだ。逆に、第一子で失敗すると、第二子以降は何倍もの時間と労力がかかることになる。つまり、第一子からのマイナスの「ピア効果」を受けてしまう。

保護者が、日常的に学習や読書をする姿を子どもに見せているご家庭では、子どもも学習や読書を苦にすることもなく、家庭文化として勉強する姿勢が身に付くという話をよく聞く。しかし、実際には、家族全員が日常的に学習や読書をする姿を見せ合う家庭は少ないと思われるので、理想的な家族の話として広がったものにすぎないだろう。学習については、よほど意欲のある人でなければ、仕事や家事に追われ、なかなか実行できない可能性が高い。しかし、読書が苦にならない保護者はチャレンジしてみてほしい。読書している姿を子どもに見せることで「ピア効果」が期待できる可能性は高い。もちろん、3日坊主の読書は「ピア効果」どころか、逆効果になるので、少なくとも子どもの受験期間中は継続する覚悟が必要だろう。

日常的に学習や読書をすることが難しいとしても、保護者の仕事や家事における意識・意欲が高ければ、我が子に対する「ピア効果」を期待できる。学習における「意識」とは、志望校や学習目標などを持って勉強することだが、仕事や家事にあてはめれば、目的や目標を持って行うことだ。さらに、学習における「意欲」は主体性を持って一生懸命に勉強することで、仕事や家事でも同様だ。子どもは親の背中を見て育つのであって、子どもに学習における「意識・意欲」を強要しても「ピア効果」は生じない。

保護者は、努力しながら、意識・意欲を持って仕事や家事に取り組んでいることが望ましい。保護者が努力もせずに、本来持っている能力だけで仕事などができてしまうのであれば、子どもとしては「大人だからできる」「自分の親は能力が高いからできる」と考え、自分にはできないととらえてしまう可能性がある。親としても、楽しいことや好きなことをやっているわけではなく、生活の中には嫌いなことや苦手なこともあることを、お説教ではない形で子どもに伝えるべきだ。ここで、お説教ではないように話すことは難しいかもしれないので、イメージとしては言葉よりも日常の行動で示すとよいだろう。行動時に「意識・意欲」を持つことの重要性を話せればよいのだが、それが子どもにとっての勉強であることは話すべきではない。そのことは子どもが自分で気が付くべきことであり、自分で気が付いた時にこそ「ピア効果」は生まれるのである。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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