記述問題の採点で悩む場合、塾以外でどこに相談すれば良いでしょう?[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小4男子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま


質問

文章問題で解答・解説を見て、子どもの答えと微妙に違う場合、○(マル)か×(バツ)か、または△(サンカク)なのか、悩む場合があります。このような場合、塾以外でどこに相談すればよいでしょう?


小泉先生のアドバイス

相談するところはないと思います。採点基準に沿ってご自分で採点するのがいちばんよいでしょう。

 ご質問は国語の記述問題の採点に関するお悩みだと思いますが、結論から言えば、塾以外(家庭教師などを含む)では相談するところはないと思います。もちろん、有料で相談を受け付けるところはあると思いますが、一つひとつの国語の問題に対して正解・不正解を判定してもらうのは、それにかかる費用や時間、特にタイムリーさを考えれば現実的ではないということです。
それではどうするか? 塾や家庭教師にお願いしないのであれば、ご自分で作った採点基準に沿ってご自分で採点するのがいちばんよいでしょう。もちろん判定に悩む場合もあるでしょうが「ちょっと違っているから10点中5点」とか「だいたい合っているから8点あげる」などという適当な採点に比べれば、採点の信ぴょう性ははるかに高いでしょう。やはり、基準があるからこその評価だと思います。

さて、採点基準ですが、まずは記述問題の答案を部品に分解してそれぞれに点数を振り分けることから始めます。答案の記述は一般的に「理由+キーワード+文末」に分かれます。ここでの「文末」とは、「なぜですか?」という問いに対する「~から。」というような文の末尾の形のことです。また、「キーワード」とは「答案のカギになる言葉」、つまり問いに対する答えの中心です。たとえば「どんな気持ちですか?」という問題では、「腹立たしい(気持ち)」がその答案の「キーワード」になります。最後に、「理由」とは「キーワード」に対する理由になります。たとえば「腹立たしい」理由が「叱られた(ため)」であれば、「理由」は「叱られた(ため)」になります。そして、それぞれの部品に対して、たとえば文末10%、キーワード40%、理由50%などと点数を分配していきます。もしこの問題が10点満点であれば、キーワードに対しては4点が配点されるという意味です。

さて、答案の部品として他にも必要なものがある場合があります。たとえば、「誰が(何が)」とか「誰に対して(何に対して)」などです。しかしこれらは、答案によって絶対に必要だったり、そうでもなかったりと一概にどうということはいえません。ですから、部品として必要な場合は配点のパーセンテージを変えて計算すれば良いでしょう。たとえば、相手10%、理由50%、キーワード30%、文末10%という具合です。

必要な部品とその配点が決まったら、次は減点の基準です。たとえば、キーワードが実は2つあるのに(たとえば「腹立たしい」と同時に「うれしい」など)1つしか書いていない場合には、4点中2点しかあげられません。また「腹立たしい」というキーワードに対して、気持ちがあまり明確に表現できていない場合(たとえば「いやな気持ち」など)は、かなり減点すべきでしょう。さらに、気持ちの方向性が違う場合(たとえば模範解答では「腹立たしい」のに、お子さまの答案は「悲しい」だった場合など)は、減点というよりもその答案全体を0点にすべきでしょう。さらに、誤字脱字は1つ減点1点とか、「てにをは」を含む言い回しがおかしい場合は1つにつき減点1点などの基準も必要でしょう。

このように、それぞれの基準を決めると、かなりしっかりした採点ができるようになります。そして、お子さまの書いた各々の部品を模範解答の部品と比べる時、たとえば微妙な採点で迷うようなことがあっても誤差はある程度の違いに収まるため、採点されたお子さま自体もなぜ減点されたのかが十分に納得できると思います。「なんとなく違う」と減点されるのと「ここがこう違うから」と減点されるのでは、後者の方が納得性ははるかに高いということです。

ここにあげた採点基準はあくまでも例であり、採点する人によって部品の分け方や配点は当然違うと思いますが、大切なことは「何らかの基準を持つ」ということです。面倒ではあると思いますが、この程度の精度は記述問題を採点する際には必要だと思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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