物の説明の順序が思いつきのため、わかりにくい[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小5男子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま
質問
物の説明の順序が思いつきのため、話のつじつまが合わなかったり、早とちりの説明をしたりしてわかりにくいです。そうならないように日常から考えて説明することを求めた聞き方をしていますが、いまだに直りません。
小泉先生のアドバイス
他の人に何かを分かりやすく伝えるには、コツがあることを教えてあげる。
「話のつじつまが合わない」とか「早とちりの説明をしたりする」のは、思いつきで話すために、途中で何を話したのか忘れてしまうからではないでしょうか。説明する内容によってやり方に違いはありますが、他の人に何かをわかりやすく伝えるには、コツがあることを教えてあげるとよいでしょう。
たとえば、1枚の写真を客観的に説明するにはどんなコツがあるかを考えてみます。ちなみに、このような「1枚の絵や写真を客観的に説明させる問題」は芝浦工業大学柏中学校の国語の入試問題の中で毎年のように出題されていました。
ここに1枚の写真があるとします。釣り堀で釣りをしている風景で、中央の男の人はまさに魚を釣り上げようとしています。この写真の情景を、他の人に直接写真を見せることなく言葉でわかりやすく説明する練習です。説明するにあたっては、次のようなコツがあることを事前に話しておきます。
(1)「大→小」の原則
説明する時は、まずは全体について大づかみに、その写真は何の写真なのかを説明します。たとえば、「何人かの人が釣り堀で釣りをしている写真」と表現すれば、どのような情景かいっぺんにイメージできるでしょう。これを小さいところから説明して、たとえば「魚を釣り上げようとしているところ」とすると、そこが海なのか、川なのか、あるいは池なのかわかりません。このように、「大→小」の手順を踏むことで説明がわかりやすくなります。
(2)「中心から説明を始める」
大きく全体を説明したら、次は中心から説明していきます。たとえば、「写真の中央に3人の釣り人が並んで座っていて、真ん中の人が魚を釣り上げようとしている」と続けます。ここで中心と言いましたが、必ずしも位置的なものではなく、その写真の主題として大切なものを中心と考えます。ですから、3人の釣り人が写真の左端にいても、やはり彼らから説明を始めるべきでしょう。
(3)「関連付けて説明する」
説明は、できる限りその前の説明と関連づけてなすべきです。前の説明では、「3人の釣り人」について説明しましたから、次はそれに関連して説明するとわかりやすくなります。たとえば、「3人のうち、向かって左の人は、釣り上げようとしている魚を網ですくおうとしている。右の人は、カメラで写真をとろうとしている。皆、笑っている」という具合です。「3人の釣り人」の左右の人が何をしているかを説明すれば、見なくても写真の構図をイメージすることができるのです。
(4)「周辺を説明する」
次は、中心から周辺に説明を移していきます。たとえば、「3人の釣り人の後ろには、女の人と男の子が手をつないで立っている。男の子はつないでいないほうの手にバケツを持っている。2人の後ろにも別の池があり、そこでも3人釣りをしているが誰も釣れてはいない。奥のほうに建物があり、そこには『釣り堀』と書かれた旗が立っている」というように説明します。このように説明していけば、写真を見ないでも情景が目に浮かぶことでしょう。そして、実際の写真とだいたい一致していれば、上手な説明といえるでしょう。
今回説明したのは、写真を客観的に説明する方法ですが、なによりも理解させたいのは、物をわかりやすく説明するには決まった「コツ」があり、それに沿って順番に説明すればわかりやすく説明できるということです。この他のわかりやすく伝える「コツ」としては、「時系列」や「5w1h」に沿った説明などいろいろありますが、まずは1つのやり方に慣れて、コツや手順の重要性を理解することが大切だと思います。
なお、「時系列」に沿った説明とは、たとえば「朝7時に起床、8時15分に出勤、12時に昼食……」というように時間の流れに沿って説明する方法です。また、「5w1h」とは、「いつ(when)」、「どこで(where)」、「だれが(who)」、「なにを(what)」、「なぜ(why)」、「どのように(how)」を組み込んだ説明を意味します。