中学受験で「面倒見の良い学校」志向高まる 不況・震災の影響も
「2012年の中学入試では、『面倒見の良い学校を志望する傾向があった』と大手塾が分析していた」と話すのは、森上教育研究所の森上展安氏。その理由としては、長引く不況と大震災の影響で、安全・安心を願う保護者が増加したためだといわれており、森上氏も現場についてこう分析している。
***
「確かに、2012年の志望校選定の傾向として、安全・安心という共通の思考が働いているように思える。その事例としては、遠距離通学を嫌って近場の学校にシフトした生徒が多かったことや、十分な合格可能性があっても更に合格可能性の高い学校にシフトした生徒(特に男子で)が多かったことがある」
「面倒見の良い学校」とは、良い意味で一人ひとりを大切に、きめ細かな指導を行えるが、それが行き過ぎると、指示がなければ動けない自主性のない子どもを育てることになってしまうというおそれもある。
一方、「面倒見の良い学校」の対極にあるのが「自主性を重視する学校」だ。これについて森上氏は、以下のように説明する。
「教師は、子どもが自分で動き出すまで、じっと我慢をして、子どもを観察しつづけなければならない。さらに、子どもを刺激する言動を繰り返すわけで、自主性を育むことは、なかなか難しい。子どもに対し教師が働きかけず、ただ放置しているのであれば、自主性重視の教育ではなく悪い意味での放任教育ということになる」
さらに森上氏は「面倒見が良い学校」が人気となっている事実について、疑問を呈する。
「長引く不況と大震災の影響で、本当に安全・安心を願うのであれば、自分の人生を切り開く力を我が子に身につけさせることが、最も必要なことだと思う。そのために必要なことは、『面倒見』よりも『自主性』を重視する校風の学校ではないかとも思うが。少なくとも、こと学校に対して求めるのはサービスということなのだろう」
保護者が求めるのは、長い人生における「安心・安全」というよりも、今現在の「安心・安全」ということなのかもしれない。