作文の時、最初から完璧にまとまった文を目指してしまう[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小4男子(性格:神経質・論理的なタイプ)のお母さま


質問

テストなどは問題ないのですが、作文にとても時間がかかります。書き上がった作品はとてもおもしろく書けているのですが、何を書いたら良いか、スタートの段階で悩んでしまい考え過ぎてしまうことが多いようです。学校でのスピーチなどは、先生からもピカイチだと言っていただき、自分の考えを主張することはできるほうだと思います。ただ作文となると、最初から完璧にまとまった文を目指してしまっているようなので、「とりあえず思うまま書いてみて、あとで直すこともできるよ」と助言はするのですが、どうしても構えてしまうのです。読書は好きで何でも読みます。


小泉先生のアドバイス

内容の構造を紙に書きながら考えたり、時間的な制約をつけたりする。

完璧なものを作ろうという思いが強いため、なかなか手が動かないというお悩みでしょう。まずチェックしたいのは、スタートの段階で悩んでいる時に、「何を考えているのか?」あるいは「どのように考えているのか?」ということです。

もしも書きたい内容を断片的に考えているようであれば、内容や展開を「構造的」に考えるように指導すれば良いでしょう。小説家が物語を書く前に構想を練るのと同じように、「感動」や「伝えたいこと」を中心に「書き出し」や「まとめ」などを考える作業です。「その『書き出し』で苦労しているのだ!」というのであれば、書き出しのパターンをいくつか持っていると気が楽になるかもしれません。たとえば、運動会や遠足の作文なら「天気のことから始める」などの約束ごとです(例:「目が覚めると、昨夜の雨がウソのように思えるほどすがすがしい朝でした」など)。もちろん、いつも同じような始まりでは飽きてしまいますから、3~4パターンは必要でしょう。

あるいは、お子さまはすでに構造的に考えているが、頭の中だけで考えているのでまとまらないのかもしれません。考えをうまくまとめるためには、紙にメモしながら考えるクセをつけると良いでしょう。書きたい内容を箇条書きや図にして、目に見えるようにして考えをすすめるのです。紙に書くと思いついたことを忘れないだけではなく、新しいアイデアもどんどん出てきやすくなります。おそらく、頭の中だけで考えているよりも書きながらのほうが一段高いところから見渡せるからでしょう。

さて、構造的にも考えているし、メモ書きもすでに行っている場合はどうでしょうか。そんな時は、「時間の制約をつける」ということを試すと良いでしょう。特にお子さまの場合は、「テストなどは問題ない」のだし、「スピーチなどはピカイチ」なのですから、内容やその組み立て方ではなく、時間の制限がされていないのが問題なのかもしれません。
時間の制約をつけるとは、「構想を組み立てて書き始めるまで10分」などの約束をすることです。性格上、より完璧な作文を目指そうとするかもしれませんが、テストなど時間的な制約がある場合はきっちり仕上げられているようですから、お子さまが納得すれば上手にできるようになると思います。試験の時などはもちろん、日常生活における場面でも時間内にベストなものを仕上げる能力は養う必要があること。また、時間は誰にとっても平等に与えられているのだから有効に使える能力を培いたいこと、などを説明されると良いと思います。

以上、解決方法を原因ごとに段階的に説明してきました。原因が一つの場合もあれば、複数である可能性もあるでしょう。お子さまの様子を見ながら、一つひとつ試してみてください。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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