大学の就職実績や就職率で進路指導を行う時代が来る [中学受験]
先日、卒業生の就活支援を実施している中高一貫校で就活支援の講演会が行われた。その学校では、昨年から大学3年生の卒業生を対象に就活セミナーを行っており、今年も実施する予定だそうだ。就活セミナーに先立ち、大手企業の採用トップのかたと就活セミナーの担当者のかたを招いて講演会を開催したのだ。大手企業の採用担当者によれば、「今年は学生にとって大変に厳しい就職となったが、来年も今年並みで、一部の業界では今年以上に厳しくなることが予想される」そうだ。この厳しい就職をどのように乗り切るか、内定を獲得するためにはどうすればよいかという話や、内定を貰った学生と貰えなかった学生の違いや、採用する時の基準についてなど、通常の就活セミナーでは聞けない現実的な話だったので、学生にとっては有益なセミナーだったと思う。
小規模な講演会であったこともあり、講師が学生と対話をすることで講演会を進めていく場面もあった。就活セミナーの講師のかたが、参加した学生に、現時点までに行われてきた大学の就活セミナーの内容を聞くと、学生の回答は「企業への応募から内定までの手続き」「SPIテストなどの筆記試験対策」「マナー講座」「企業の人事担当者を招いた職種・業界・企業紹介」などの就職に必要な一般的な知識と情報の講演が多かった。最も重要な、具体的な自分の「強み」の調査方法やその「強み」をもとに将来行いたい仕事を考えるための自己分析を行っている大学は10%にも満たなかった。大学の就活セミナーが実戦的ではないことは明らかで、もちろん、内定を取るための方法やテクニックを指導する大学はなかった。最も肝心な部分が学生任せになっており、これでは、来年の1月ごろから始まるエントリーシートや面談に対応することは難しいというのが、講師の見解だった。
今年から、大学は就職率等の情報公開を求められることになり、少子化のなかで生き残りをかけて、これまで以上に学生の就職指導に重点を置いている。しかし、その実態は、これまでに行ってきた指導の焼き直しに過ぎない大学がほとんどだそうだ。これまでに、的を射た指導を行っている大学は少数で、その格差は大きいという情報があった。しかし、今回の講演会でも学生の話から、大学で行われている就活セミナーの実態が明らかになり、その情報は正しいことが裏付けられた。さらに大学の格差が大きくなれば、学生が希望する企業の内定を勝ち取れるかどうかは、学生個人の力量だけでなく、大学の就活支援の質によって大きな違いとなっていくだろう。今後、大学の評価は入口の偏差値にとどまらず、より多面的になってくると思われる。