基礎がわかっていても、知識がないと解けないものでしょうか[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小3女子のお母さま


質問

先日全国統一小学生テストを受けましたが、教科書で出てきていないような問題はほとんど解けなかったようです。基礎がわかっていれば、解けるのではと思ったりしますが、知識がないと解けないものでしょうか。


小泉先生のアドバイス

「前にやったことのあるような問題」でなければ、なかなか試験時間内には解けない

基礎がわかっていても、解き方を知らないとなかなか解けるものではありません。しかも、試験では時間が限られていますから、自分の引き出しにある知識を問題演習によりパッと取り出せるようにしておく必要があります。

たとえば、「三角形の面積=底辺×高さ÷2」という公式を勉強していれば、図1の三角形の面積は出せるでしょう。しかし、図2のような三角形が試験に出た場合、前もって演習しておかないと、



三角形ADC=DC×AH÷2とはすぐに出せない場合が多いと思います。また、図3のような場合はどうでしょうか。三角形ABDと三角形ADCは高さが同じですから、それらの面積は、底辺の比に比例しているはずです。すなわち、三角形ABD:三角形ADC=7:5となります。このことは、三角形の面積の出し方という「基礎」さえ知っていれば導き出すことは可能です。しかし、現実には子どもたちが簡単に思いつくことではありません。実際に、これらのことは「面積と辺の比」という単元で学習する重要な知識なのです。
そして、さらにその応用として、図4のような問題があります。たとえばここでは、「三角形ABCと三角形EDCの比を求めなさい。」という問題になりますが、たとえ「面積と辺の比」についての基礎を学んでいてもなかなか解法を思いつくことはできないでしょう。この問題は図5のように、ADという補助線を引く必要があります。すると、「面積と辺の比」より、三角形ABD:三角形ADC=7:5、三角形EDA:三角形EDC=5:6となります。これより、三角形ADCを5とすると、三角形EDA:三角形EDC=5×5/11:5×6/11=25/11:30/11となります。また三角形ABCは12(7+5=12)です。よって、三角形ABC:三角形EDC=12:30/11=132/11:30/11=22:5となります。

ここでは、「面積と辺の比」についての知識はもちろんのこと、補助線を引くことや、比の計算など問題演習をとおしての経験が必要になってきます。「基礎」がわかっていても、解き方に関する「知識」がないと解けないのです。もっと言えば、「前にやった問題」あるいは「前にやったことのあるような問題」でなければ、なかなか試験時間内には解けないと考えて良いでしょう。ですから、算数の成績は演習した問題量に比例すると言われるのです。お子さまの場合も、「教科書で出てきていないような問題はほとんど解けなかった」のは、もっともなことです。そのような問題を解けるようになるためには、それらを解くための知識と、それらの類題を何題か解いて経験を培うことが必要だと思います。




プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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