家風と校風による志望校選定 [中学受験]

現在は、家風という言葉はあまり使われなくなって、代わりに家庭文化というような言葉で表現されるようになった。しかし家庭文化には教育方針も含まれると思うので、ここでは「家風」を使って話を進める。校風も、教育方針と同様、概念なのでそれ自体に優劣はないと思うが、うまく運用できているかどうかで優劣が生ずることはある。また、学校の教育方針と同様、我が子と我が家に合った校風かどうかによって、我が子にとっての優劣はあるだろう。つまり、我が子と我が家に合った校風であれば、子どもはイキイキと学校生活を送ることができ、我が子の学力と人間力を高めることができる優れた校風と言える。

最近は、家という概念がなくなる傾向にあり、父親方の家風を尊重する家庭よりも、夫婦で築いた家風を家族で尊重する家庭が多いと思う。家風は、夫婦で築いていくべき家庭における文化で、同じような価値観を持った夫婦であれば問題はないが、異なる場合は子どものためにも調和を探るべきだと思う。もう一つの問題は、親が作ってきた家風を、子どもが受け入れているかどうかだ。家風が、子どもの性格と合わないことも考えられる。その場合は、子どもも、ともに家風を築いていく一員として認識しておく必要がある。

校風は、子どもにとっては比較的わかりやすいと思う。文化祭や学校説明会で子どもと志望校を訪問したときに、校風が子どもの感覚に合うかどうかを、聞いてみるとよい。自分の家の家風と同じようであれば楽しく安心できる気持ちになるが、そうでなければ何か居心地が悪い、不安な気持ちになるだろう。
教育方針と同じように校風を3つの種類に分類して学校がどのようなタイプがあるかを調査した。調査結果は、「生徒管理重視」(19%)「自主性重視」(42%)「自主性/生徒管理中間(36%)「無回答」(3%)で、やや「生徒管理重視」の校風が少ないように思える。ただし、明らかに「生徒管理重視」と思われる学校が、受験生・保護者の好みに合わせて「自主性重視」と答えていたケースが何件かあったので、ほぼ同数の3つのグループに分かれると言ってよいと思う。

校風と家風が完全に一致しているという必要はないが、ほぼ一致していることが重要だ。教育方針では、学力と人間力のどちらをどれだけ重視するか、学力や人間力を向上させるためにどのような方法を学校は行っているか、その方法は、我が家の教育方針と一致しているか……というように具体的に確認することができる。しかし、校風と家風では、具体的なこともあるが、抽象的な要素も多く、感覚的に合うかどうかで確認するしかない場合が多くなる。前回のコラムでも話したように、子どもにとっては、家と学校の教育方針が極端に異なる場合、学校生活がしにくい。同じことが家風と校風にも言えるが、子どもにとっては、教育方針よりも校風が合わなかった場合のダメージのほうが大きいと思う。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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