有名大学と有名企業[中学受験]

有名大学に入学しても有名企業(大手企業)から内定を貰うのはなかなか大変で、昨年10月1日での大学4年生の内定率が60%を割り込んだというニュースが記憶に新しい。中学入試では、有名大学に進学できることが学校選定の大きな部分を占めている。受験生・保護者にしてみれば、有名大学に入学しても有名企業から内定を貰えないのでは、中高一貫校に進学させる意味がないと思うのではないだろうか。

就職には学歴は関係ないという企業は増えてきているが、まだまだ、学歴によっては、面接をしてもらうこともできない企業も多い。就活の現状を調べてみると、出身大学によっては、エントリーシートの時点で門前払いとなるようなケースが多く見られる。確かに、有名企業では多くの志願者が集中し、すべての志願者を面接することは物理的に無理がある。そこで、筆記試験かエントリーシートで書類選考することになるが、エントリーシートを読むのも量が多いと大変な業務となる。そこで、学歴でふるいにかけてから、エントリーシートを読むということになるのだ。

ところで、昨年の6月に、私立中高一貫の進学校で、在校生の保護者に「有名大学への進学とその後の有名企業への就職ではどちらを重視しますか?」というアンケートを行った。アンケートの結果を集計すると、「有名企業に就職」を重視する保護者が32%で、進学校でも「有名企業に就職」を重視する保護者が多いことを実感した。
また、昨年の10月に、大学付属の私立中高一貫校で在校生の保護者に上記と同じアンケートを行った。アンケートの結果は「有名企業に就職」を重視する保護者が予想以上に多く、66%にもなり、6月の進学校でのアンケート結果と比べると2倍となる高い数値であった。ちょうど大学生の就職難がニュースとなっていた時期なので、その影響があったかもしれないが、その後も大学生の就職難はニュースとして流れており、今後も大学生の就職難は定着しそうな状況だ。
このような大きな差が出たのは、アンケートを行った時期の違いだけではなく、進学校と付属校の違いにあるのかもしれない。進学校では、大学受験が次の目標となるが、付属校では進学する大学は決まっている。就職が次の目標となるので、付属校で結果が高くなることも納得できる。

アンケートの結果から、中高一貫校の在校生の保護者は、有名企業に就職するために中学受験を行い、有名大学に合格するだけの学力を付けたいと考えた受験生・保護者も多いと思うが、有名大学に入学するだけでは希望する就職はできないことを感じているのではないだろうか。今後、付属校ではもとより進学校でも「有名企業に就職」を重視する保護者の数は増加すると思われる。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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