文章題の登場人物の気持ちを読み取ることができません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小4男子(性格:大ざっぱ・わんぱく)のお母さま


質問

普段からたくさん読書をしていますが、文章題の登場人物の気持ちを読み取ることができません。どのような勉強をすれば、気持ちがわかるようになりますか。


小泉先生のアドバイス

問題文にある「仕組み」を見せて、実感させる

読書の習慣が身に付いているのに、テストでは登場人物の気持ちが読み取れない。不思議に聞こえますが、このようなお子さまは案外多いかもしれません。原因としては、二つのことが考えられます。

一つは登場人物の気持ちをほとんど考えずに、展開だけに集中して物語を読んでいるケースです。気持ちをほとんど考えずに読むのですから、登場人物の心情をくみ取ることができないのも当然です。
試しに、今読んでいる本のある場面における登場人物の気持ちを、お子さまに説明させてみてください。お母さんもその場面を読んでみて、お子さまの説明になるほどと思えるかどうかです。まったく気持ちが言えないとか、的はずれな感じがしたら、あまり気持ちを考えて読んでいないということです。
そんな場合は、登場人物の気持ちを考えながら読むことを強制しても、なかなか上手くいかないかもしれません。あまり無理強いすると、読書自体を嫌がるようになりかねません。読書はあくまでも、自由に楽しむものだと思います。気持ちを考えながら読むほうが、より深い読書を楽しめることを根気強く教えてあげてください。

さてもう一つの原因は、テスト問題における「仕組み」を見落としてしまうケースです。物語では登場人物の気持ちをどのように感じても、それは読者の自由です。しかし、テスト問題における物語文では、答えは一つであり、それを書かなくては正解になりません。答えが一つになるような「仕組み」が、問題文の中に施されているのです。
テストになると登場人物の気持ちを読み取ることができないお子さまには、この「仕組み」について教えてあげると良いでしょう。すなわち、テストの問題文には、登場人物の心情を断定できる根拠(これが「仕組み」です)があるということを伝えます。さらに、問題文にある「仕組み」を見せて、実感させると良いでしょう。
「読書で物語を読むのと、テストで問題文を読むのは違うんだ」ということをお子さまがしっかり実感できれば、国語上達への大きな一歩になると思います。

ところで、最初のケースのストーリー展開にしか注意を向けないお子さまですが、もし読書とテストで問題文を解くことの違いを理解し、少なくともテストで問題文を解く時は登場人物の気持ちを考えることに集中するのであれば、読書の時は自由に読ませても問題ないかもしれません。勉強以外の娯楽のための読書であれば、本人が楽しむことをわざわざ邪魔する必要はないと思うからです。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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