大卒の就活で強い情操教育[中学受験]

中高一貫校の女子校で受験生・保護者に人気の高いのは、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政の各大学)の合格実績が多い学校だが、他方で、中学1年生・2年生の女の子を持つ保護者が我が子に願うことは、有名企業に内定することなのか? 有名大学に合格することなのか?
もちろん両方だと思うが、どちらか一方を取るとしたら、というアンケートを行った。結果は、約75%が有名大学で、残りの約25%が有名企業であった。有名企業と回答した25%が多いと考えるか、または少ないと考えるかだが、大半の受験生・保護者が志望校を大学合格実績またはその結果で決まる偏差値で検討していることを考えると、25%は多いとわたしは思う。

一般的には、大卒の就職は学歴で決まるものと考えられている。より難易度の高い大学を目指すためには、受験教育に定評のある私立中高一貫校に通わせたいという保護者が多くなったために、伝統的な情操教育を掲げてきた多くの女子校が受験教育にシフトしてきたことは事実であろう。そのような社会の流れの中で、情操教育を貫きつつも大学卒業後の就職で成果を上げている前記の品川女子学院のような女子校がある。他に実践女子学園や北鎌倉女子学園などがこれに該当しようか。

通常、情操教育は心の教育であって実利が目的ではない。実利を考えるのは不謹慎と学校の先生には怒られそうだが、情操教育で実利を示すことが、子どもたちが情操教育に取り組む契機になるだろう。考えてみれば受験教育は、学歴を得るという実利があるので、もてはやされてきたわけだ。情操教育に取り組むことで身に付いた人間性を使って、就活で有名企業から内定をもらうという実利があるとも言えよう。
情操教育は、子どもたちには固苦しくなかなか受け入れられないものだが、自分のためになる教育ならば受け入れられやすい。その点を考えると、実利的な情操教育は非常に良く考えられた仕組みであり、卒業生への就活支援もさらに成果を出すことで、情操教育の重要性を子どもたちに示すことができる。子どもたちが希望する仕事に就くことを人生の目的のひとつと考えれば、目的を達成するための方法は、受験教育はもちろんだが、むしろ情操教育も、であってほしいものだ。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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