卒業生の大学生に就活支援を行っている学校[中学受験]

キャリアデザインと受験を結び付けて考えると、将来自分が希望する仕事に就くために受験勉強をすることは生徒にも納得できるので、一生懸命に学習して志望大学に合格する現象が多くの生徒に見られる。キャリアデザインは、男子校や共学校でも行われているが、特に女子校では盛んに行われるようになった。
女子校のほうがキャリアデザインを導入している学校が多いのはなぜだろうか? キャリアデザインを学ぶ中学生のころは、男子は、未熟な生徒が多く、将来のことまで考えられる生徒は少ない。それに引き換え、女子は早熟な生徒が多いので中学生でも十分に将来や職業を理解することができるのではないだろうか。また、女子はまだまだ男子に比べて就職は不利な立場にあるので、それがわかっている女子のほうがキャリアデザインに対して積極的なのではないか。

子どもたちの反応が良ければ、学校としてはそれだけキャリアデザインに力を入れたくなるものである。品川女子学院では「28project」なるライフデザイン教育があるが、卒業後も卒業生との関わりを大事にし、20歳のときは「成人を祝う会」や就職のときは「白ばら就職情報交換会」があり、28歳では「28歳ホームカミングデー」がある。
特徴的なのは「白ばら就職情報交換会」で、大学生になった卒業生の就活支援をしていることだ。就活支援は明らかに教育・指導であるが、これまでの中高一貫校では卒業後も生徒の教育・指導を行う学校はなかった。卒業したあとも、さらに社会に出たあとの教育まで責任を持って卒業生を教育・指導しようとしているのだ。それほど、仕事が女性にとって大事な要素になったとも言える。

女子校にはキャリアデザインが充実している学校が多いので、学校としては「キャリアデザインを行っている」というだけでは他校と差別化できなくなった事情もあるかもしれないが、卒業後も教育・指導を行っている理由は、それだけではないと思う。確かに、中高一貫校は大学に子どもたちを送り出すための「単なるパイプ」ではないだろう。「大切な卒業生を、大学だけに任せてはおけない」という気持ちを持ち、卒業生を教育・指導することは大事なことである。教育が社会に貢献できるように子どもたちに付けてあげるべきものならば、大学だけではなく中高一貫校が卒業後も卒業生を教育・指導していくことに何の驚きも疑問もない。

9月、10月は学校説明会が最盛期となるが、キャリアデザインに注目して参加すると学校の教育方針を理解しやすくなる。入学後、キャリアデザインで我が子がどのように成長していくかイメージしてみると良い。特に女子校を受験する場合は、志望校を選定するうえで、学校がどのようにキャリアデザインに取り組んでいるかを見極めておく必要がある。キャリアデザインで大学合格実績の成果が出ている学校が多いだけに重要なポイントとなる。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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