普段の会話でも相手にわかるような話し方ができない[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子(性格:大ざっぱ)のお母さま


質問

普段の会話でも相手にわかるような話し方ができないので、文章は非常に稚拙です。興味のあることはよくしゃべりますが、聞いている側はよくわかりません。


小泉先生のアドバイス

話す時にいくつかの原則を守ることから始めます

「聞いている側はよくわかりません」ということですが、すぐに思いつくのが子どもたちの「一語文」や「語尾無し言葉」です。
「一語文」と言うのは、たとえば「先生、プリント」というような話し方です。先生としては意味がわからずに「え、何か渡すプリントあったかな?」「授業で使うプリントを忘れたのか?」などいろいろ聞き返すことになります。
また、「語尾無し言葉」とは、「先生、プリント……(何かモゴモゴ言っている)」という具合に、語尾が聞き取れない話し方です。確かに何か言っているので「一語文」よりは上等ですが、日本語は語尾が重要なので、その部分がわからないとやはり問いなおす必要が出てきます。「プリントを忘れたの? それとももらってないの?」というように、選択肢にしないと状況がわからないのでは適切なコミュニケーションとは言えません。

このような子どもたちは文章を書くのも苦手ですが、まずは話し方から学んでいくのが良いと思います。しかし、あまり最初から多くのことを望むのではなく、話す時にいくつかの原則を守ることから始めましょう。
まずは、なんと言っても「一語文」ではないこと。また、「語尾まではっきり言う」ことです。この原則が守れると、「先生、プリントを忘れました」「先生、プリントをください」など、かなり会話らしくなります。もちろん「どんなプリント?」「いつ渡したものかな?」など、さらに詳しい情報を聞き直す必要はありそうですが、会話としては素晴らしい進歩だと思います。
さて、もうひとつの原則は、必要に応じて「理由」を付けるということです。たとえば、「家に忘れてしまったので、昨日もらった算数のプリントをください」などです。もちろん「申し訳ありませんが」を付けたり、「もらった」を「いただいた」にしたほうがより良いでしょうが、最初のステップとしてはこのふたつの原則を守ることで十分だと思います。

ところで、「理由」を付け加えることは、自分の失敗の「言い訳」を助長するようで潔くないという風潮もあるかとは思います。もちろん自分の責任を他に転嫁するような「理由」の付け方は良くありませんが、自分の意思や状況を相手により明確に伝え、コミュニケーションを弾ませるためには、「理由」を付けるのは有効な方法だと思います。

これらの原則に慣れたら、より良い表現のために子どもたちの言い方を直してあげるのも良いでしょう。今までは「一語文」や「語尾無し言葉」のために、その内容の解明だけで終わっていたのですから、素晴らしい進歩だと思います。さらには、言いたくてもなかなか言えなかった「抽象的な言葉」や「複雑な感情を表わす言葉」を「あなたの言いたいことは『○○○』ということだよね」いうように教えてあげるのも良いでしょう。
このような会話でのレッスンは、文章を書く時にも大変役立つことになります。比較的短期間で効果が上がり、しかも日常的に気軽に行える方法だと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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