登場人物の気持ちになって解答することが苦手です[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子(性格:論理的)のお母さま


質問

登場人物の気持ちになって解答することが苦手です。選択肢問題は合っているので、読み取れてはいると思うのですが、自分の言葉で説明するのは苦手なようです。


小泉先生のアドバイス

文字で書かせる前に、まずは口頭で説明させるようにする


「主人公の気持ちになって解答することが苦手」というのは、一般的に、(1)気持ちそのものをイメージできない、あるいは (2)気持ちをイメージできるがそれを言葉で表せない、のいずれかが原因と考えられます。(1)の場合は、気持ちを表わす言葉(心情表現)から、その裏に隠されている気持ちがイメージできない場合です。あるいは、複数の心情表現や状況を総合的に判断できていない場合もあります。

例題:
頭の中は氷水が流れ込んだように冷たくなり、外で鳴いていたセミの声が一瞬途切れたように思えた。ボクはふらふらと棚に近づくと、飾ってあった標本を自分のカバンの中に入れた。


問      線「外で鳴いていたセミの声が一瞬途切れた」とありますが、このときの様子としてもっとも適当なものを1~4の中から選び、その番号を書きなさい。


1.思考力が停止している様子
2.気持ちが集中している様子
3.標本を手に入れて喜ぶ様子
4.信じられないほど冷静な様子

たとえば上記の問題は、友人の部屋に一人でいた「ボク」が、欲しかったチョウの標本を盗んでしまう場面ですが、傍線部にある「(セミの声が)一瞬途切れた」以外に、「(頭の中が)冷たくなり」「ふらふらと棚に近づく」などを総合的に考えて選択肢を選ぶことになります。セミの声が聞こえなくなったことから2の「気持ちの集中」、(頭の中が)冷たくなったことから4の「冷静な様子」などを選ぶ生徒もいるかもしれませんが、「ふらふらと棚に近づいた」ことなどを含めて総合的に考えると、やはり1の「思考の停止」が最適と考えます。
このようにひとつの表現だけでその時の様子や気持ちを絞るのではなく、その時の状況といくつかの心情表現を踏まえて総合的に考えることが大切です。

(2)は心情表現を適切な言葉で表わせない場合、つまり選択肢などで気持ちを表す言葉が示されればできるが、記述問題などになるとできなくなってしまうケースです。そして、ご質問の中の「選択肢問題は合っている」からもわかるように、今回のお子さまの状況はおそらくこのケースであると思います。気持ちを表わす言葉を知識としては知っているのに、なかなか表現できないという生徒さんです。

このような場合は、気持ちや様子を文字で書かせる前に、まずは口頭で説明させるようにするとスムーズにでてくる場合があります。「話し言葉」は「書き言葉」よりもあいまいさが許されるため、その分、試行錯誤する余裕があるのかもしれません。あるいは、お子さまの説明にお母さんの意見が加わることで、新たな視点を発見する場合もあるでしょう。お子さまのような「論理的なタイプ」の生徒は、特に人に説明するのが苦手な場合が多いので、このようなトレーニングが効果的だと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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