2009年度入試で何が問われたか<社会>

■出題傾向

(1)テーマ

大きな特徴は「現代社会に対する関心を問う」ことをテーマにしている学校が多いことです。国内外の今日的問題を切り口にした出題が目立ちます。国内外のできごとと受験生の既習内容をリンクさせて、現代社会の抱えているさまざまな問題について考えたり、理解を深めたりする問題が多く見られました。これは、社会科という教科のもつ役割を考えると、今後も続くだろうと考えられます。

(2)時事問題キーワード

全体で約8割の学校が時事問題を出題しています。これも記述と同様、女子校の多さが目立ち、女子校に限ると85%の学校が出題しています。 2009年度入試で見られた時事問題のキーワードを挙げておきます。


  • 食品偽装
  • 食の安全
  • 食料価格の高騰
  • 食料自給率の低下
  • フードマイレージ
  • 地産地消
  • バーチャル・ウォーター(仮想水)
  • ねじれ国会
  • 裁判員制度

(3)時事問題ベスト10

2009年度の時事問題ベスト10は、以下のとおりです。

1位洞爺湖(とうやこ)サミット
2位裁判員制度
3位北京オリンピック
4位ねじれ国会
5位バイオエタノール
6位アメリカ大統領選挙
7位サブプライム問題
8位首相の辞任
9位アイヌ先住民族
10位岩手・宮城内陸地震

大別すると、1位が国内政治の動き、2位が食料問題、3位が中国関係(オリンピック・貿易など)となります。

<1位 国内政治の出題例>

早稲田(2回) 大問4:日本の政治についての問題

問題文の中に、「ねじれ国会」「裁判員制度」「観光庁」という言葉が見られます。また時事問題とは関係ありませんが、最近、問7のような「すべて選びなさい」という選択式の出題形式がよく見られます。一字一句注意深く読む必要があるでしょう。

<2位 食料問題の出題例>

慶應義塾湘南藤沢中等部 大問1:日本の農業と食料についての問題

<3位 中国関係の出題例>

日本女子大学附属(2回) 大問4の 4 :2008年の新聞記事から考える中国の人口、民族についての問題

■分野別の頻出事項

以下の分野別頻出事項をよくおさえておきましょう。また、今年は衆議院総選挙が行われましたので、2010年度は政治分野での出題が必ず多くなります。注意しましょう。

(1)地理的分野

  • 地形図の読図
  • 農業・漁業・食料問題
  • 都道府県の問題(北海道と沖縄は歴史的分野に関する出題も多い)
  • エネルギー

(2)歴史的分野

  • テーマ史(金属・年号・税・仏教・住まい・治水・教育など)
  • 外交史(特に日中関係史)
  • 史料・資料問題

(3)公民的分野

  • 国会・内閣・裁判所・選挙
  • 世界の国々(サミット、貿易、資源、食料問題)
  • 労働・人権(労働三法、社会保障制度、日本国憲法、地方自治)

プロフィール


早川明夫

社会科入試問題研究の第一人者。大学付属中高の教頭を経て、文教大学で社会科の教員養成にあたった。現在、文教大学地域連携センター講師。主な著書に『応用自在』『考える社会科地図』『総合資料日本史』『地図っておもしろい!』(監修・執筆)ほか多数。『ジュニアエラ』の総監修者。

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