平面図形あたりからつまずいています[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5女子のお母さま


質問

平面図形あたりからつまずいています。娘は私から何か言われるのが大嫌いです。「算数は3回繰り返せ」「わからないことは、聞きに来い」と何度言っても、わたしの所には決して来ません。当然算数の偏差値は40代前半です。ただ塾に行って帰って来ているようにしか思えません。当然算数が嫌いになっていると思います。通常の対策として、「ワンクラス下げた問題集で、本人がどこにつまずいているのか、それを見極める」「ある分野(なるべく点が取れているところ)を徹底的にできるようにして、不得意分野の中にある得意分野を増やしていく」があります。我が家の娘には、どんな方法が有効でしょう。


小泉先生のアドバイス

「基礎力」「分野・単元」「解法の手順」などに関する視点を持つ

どの科目でも同じですが、「弱点を見つけ、それを克服していく」というのが対策の基本です。弱点の見つけ方としては、ご指摘のとおり「ワンランク下げた問題集で……それを見極める」で良いでしょう。ただし、その時に何らかの「視点」がないと、なかなかお子さまの弱点を見つけることはできません。問題を何問か解かせてみて、できた問題とできない問題がわかったとしても、なぜできなかったのか(あるいはできたのか)がいま一つわからない場合が多いのです。
それではどのような視点を持てば良いのでしょうか。算数の場合は、「基礎力」「分野・単元」「解法の手順」などに関する視点です。

まず「基礎力」とは、計算力や、文章題を読んで内容を理解する力などです。計算間違いが多くないか?あるいは遅くないか?などをチェックしてください。さらに、どのような四則計算が苦手なのかも見極める必要があります。分数の割り算や穴あき計算など、つまずいているところがあれば見つけてください。克服するための対策としては、苦手な計算問題を中心に毎日20分程度計算練習をすると良いでしょう。
なお、ご相談のお子さまは国語が非常に得意なので、文章題の内容を理解できているとは思いますが、国語の読解と算数の読解はやはり違います。本当に問題内容がつかめているか、一度はチェックしたほうが良いと思います。

次は「分野・単元」に関する視点です。たとえば、文章題の中で「『速さ』は比較的できるが、立体図形は苦手」などを見極めるということです。見極める方法としては、模擬試験の返却書類の中に入ってくる、「正答率一覧表」を使うのが一番早いでしょう。この表には、問題ごとの正答率が表示されていますから、正答率50%を超える比較的やさしい問題でお子さまが間違えているものをピックアップします。それにより苦手な「分野・単元」を見つけ出そうとする手法です。一回の試験ではわかりづらいとは思いますが、複数の試験のデータを蓄積することで特に苦手な分野・単元が浮かび上がってくると思います。状況が把握できたら次は対策ですが、一部の分野・単元が苦手な場合は、そこを弱点補強すれば良いでしょう。また、どの分野・単元も全体的に良くない場合は、ご質問で指摘されたように、比較的得意な単元に注力して得意分野を一つでも作る方法が良いと思います。ただし、その時に「解法の手順」の視点を忘れずに持つことが大切です。

「解法の手順」とは、問題を解く手順のことです。たとえば図形問題(図と問題文がある場合)では、まずは問題文を読み、問題文の中にある条件をすべて図に書き入れるなどの「条件の整理」を行います。次にその図の≪ある箇所≫に「着目」し、解法のための「方針」をたてます。たとえば、2組の三角形の辺の比が等しいことに「着目」して、相似を使って解けるのではないかと「方針」をたてるのです。「方針」をたてる時は、数学における「三平方の定理」などの公式や中学受験における「つるかめ算の解き方」など、「解法のためのツール(道具)」を上手に使う必要があります。さらに、たてた「方針」にそって「計算」を行い、答えにたどりつくわけです。
この「整理→着目→方針→計算→答え」を「解法の手順」と呼んでいますが、実はこの手順は、算数や数学の問題を解く場合に共通する手順だと考えます。算数が得意な生徒は、多くの場合、この手順で問題を解いています。逆に、算数が苦手なお子さまは、次に何をすればよいのかわからないため手が止まってしまい、同時に思考も止まってしまうのです。たとえばお子さまの場合、図形が苦手と言われていますが、条件整理をしっかり行っているでしょうか。問題文の条件を図に移すことなく、問題文と図を交互に眺めて考え込んでいるようであれば、なかなか問題は解いていけないと思います。
また、質問の中にありました「ある分野を徹底的にできるようにして……」という方法は、その分野を使って「解法の手順」をしっかり身に付けるという意味もあります。この手順が定着すれば、他の分野・単元でも応用可能なので、得意分野を増やしていけるというわけです。「算数はこんなふうに解くんだ……」という実感を持つことが、「解法の手順」が定着するということです。そして効率的に「解法の手順」を身に付けるには、この手順を意識することが大切です。一連の手順の中で自分は何をしているのか、次に何をすべきかを考えながら問題を解いていくと良いでしょう。

以上、「基礎力」「分野・単元」「解法の手順」などに関する視点を述べてきましたが、生徒がつまずく箇所はそれこそ千差万別です。一つひとつ、しっかりと弱点を探し、見つかったらそこに注力して苦手を克服していきましょう。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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