【回答:中曽根陽子】塾<その1>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。


【回答:中曽根陽子】塾<その1>

親も子も中学受験の決心がつかないまま塾に通い始めるのは無謀?

入塾テストの結果が原因でママ友と気まずい雰囲気になっています…

幼稚園生の娘。塾はいつから? 近所の塾か電車通塾か?

親も子も中学受験の決心がつかないまま塾に通い始めるのは無謀?

新小学5年生の男の子の母です。中学受験をさせたいのですが、周りはほとんど受験しない環境で、本人もあまり乗り気でないというか…ピンとこないようです。
どちらかというと、内気なおっとり派なので、5年生から塾でやっていけるかも不安です。中学受験の良さはわかっているものの、この子には向いていないのではないかと、不安ばかりで決心がつきません。近々、塾に体験授業を受けに行く予定です。親の決心がつかないまま塾に入れるのは無謀でしょうか。子どもの決心も必要でしょうか。
「中学受験の良さはわかっているものの、この子には向いていないのでは…」ということですが、最初から難易度の高い学校をめざすのか、実力に応じて学校を選ぶのかというように、目的によってアプローチのしかたもさまざま。
今の段階でお子さんがピンと来ていないというのは、特に珍しいことではありません。
塾の体験授業を受けてみることにしているということですが、ひと口に塾といっても、内容も負担の度合いもいろいろです。
内気でおっとりしているお子さんなら、少人数でじっくり学べる塾を選んだほうがうまくいくのかもしれませんね。
いずれにしても、とりあえず入れてみて、あとはなんとかしようというのではなく、「そもそも何のために、お子さんに中学受験をさせたいと思っているのか」ということを、親御さん自身がもう一度考えてみませんか。

中学受験というのは、受験をするのは子どもだけれど、親の受験でもあります。ですから、親御さんが受験をさせることのメリットとデメリットをよくお考えになって、お子さんにとって何がベストな選択であるのかということを判断しなくてはなりません。
そのうえで中学受験をさせてみようと思われるのであれば、どういう受験をさせたいのかというご家庭の方針をはっきりさせたうえで、「お父さんとお母さんは、こういう理由で中学受験をしてみたらいいと思うのだけれど、○○ちゃんはどう思う?」というように、お子さんにも選択肢をもたせつつ、よく話をしてあげましょう。その際、お子さんが公立中学を選ぶ可能性もありますから、公立中学を完全に否定しないように気をつけてください。

入塾テストの結果が原因でママ友と気まずい雰囲気になっています…

塾の入室テストを受け、うちの子は受かったのですが、親子共に仲良くしているお子さんは落ちてしまいました。その後、お子さんは別の塾に入ったようですが、ママ友達とはなんとなく気まずい関係になっています。学校説明会も一緒に行こうと言っていたのですが、声をかけられません。幸い、子どもたちは今までどおり仲良くしているようですが、ママ友達にどうアプローチすればよいか迷っています。
中学受験の悩み事のひとつに、ママ友達との関係がよく挙げられます。受験というのは合否の結果がついて回るものですし、そのことに対する受け止め方もそれぞれ違うので難しいですね。

気まずい関係になってしまったということで、さぞ気が重いことと思います。
しかし、どちらにしても、結果は受け入れるしかないことなので、あまり過度に気になさらないほうがいいのではないでしょうか。
入塾テストの結果が、そのまま入試の結果に影響するものでもないですし、仲の良いお友達同士が同じ塾に通うと、かえって後々ややこしいこともあります。

幸い、お子さん同士は今までどおり仲良くされているということですから、大人があまり意識しすぎず自然に任せて、相手のかたが何も言ってこなかったら、折を見てこちらから声をかけてみてはどうでしょうか?
案外、相手のかたも声をかけてくれるのを待っているかもしれませんよ。

幼稚園生の娘。塾はいつから? 近所の塾か電車通塾か?

娘は現在、幼稚園の年長です。中学受験は決めていますが、志望校は未定です。
ただ、自分が大学までエスカレーター式だったので、できれば娘も同じようにと思っております。
いつから塾に通わせればよいのか、また電車通塾でも有名塾のYに行かせるべきか、近くのNにするかも迷っています。
まだ少し先のことではありますが、教えていただければ幸いです。
娘さんに、同じ道を歩ませたいと思われるということは、ご自分の経験が良いものであったと今実感されているからですね。それは、とてもお幸せなことだと思います。
塾についてですが、中学受験のためのカリキュラムは、小学4年生から組まれているところが大半です。したがって、中学受験のための通塾ということであれば、小学4年生(塾では小学3年生の2月から始まるところが大半)からが一般的です。

小学1年生からのコースをもっている塾でも、低学年の間は基本的な学習習慣をつけること、知的好奇心を高めることなどを目的にしているところが多いと思いますし、少子化に伴い、早い段階から子どもを囲い込みたいというねらいもあります。低学年の間は、負担の少ない近所の自習型の塾で読み書き計算などの基礎学力をつける、あるいは通信教育などを使って家庭で学習習慣をつけることで十分ではないでしょうか。あまり早いうちから通塾すると、肝心の高学年になった頃に息ぎれしてしまうケースも見受けられます。時間のある低学年の間こそ、机の上の勉強だけでなく、運動や遊び、体験の機会を大事にしたいものです。

また、塾とひと口に言っても、さまざまなタイプがあります。電車通塾でも有名塾のYか、近くのNか迷っていらっしゃるということですが、大手塾は教室によっても内容や雰囲気が違ったりします。また、お子さまのタイプによっても、大手塾より小規模塾のほうが合っていて、結果が出ることもあります。実際に選ぶときには、うわさや進学実績だけに惑わされず、必ずご自身の目でいろいろなタイプの塾をご覧になってください。

同様に志望校についても、大学までエスカレーター式で上がれる大学付属校を考えていらっしゃるということですが、お子さまは小学校入学前。まだまだ、お子さまの資質を見極めるのは難しいと思います。親としての希望はもちつつ、もう少し成長されてから、お子さまの資質や希望に合った進路選択をする寛容さはもっていてほしいと思います。そのうえで、時期がきたら、お子さまともよく話をして、目的やお子さまのタイプに合った塾選びをしてください。

プロフィール



教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

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