2017/08/07
「英語4技能育成を考える」① -英語力向上の要因をエビデンスから探る-
グローバル教育研究室 室長
加藤由美子
加藤由美子
「生徒の英語力を伸ばす授業とはどのような授業であろうか。英語教育に関わるものであればだれもがその答えを知りたいであろう。」これは、「英語教育」2017年8月号(大修館書店)の「英語力を伸ばしている学校の要因を探る」の記事の冒頭で、根岸雅史先生(東京外国語大学)が、書かれたことばです。
小中高一貫した目標を設定し、児童・生徒の英語力を4技能バランスよく伸ばしていこうとする英語教育改革が進みつつあります。英語力を伸ばすためにどうすればいいのか。根岸先生のことば通り、文部科学省、教育委員会や学校の先生、民間の教育事業者、保護者、そして英語を学習する子どもたち自身が、その答えを知りたがっています。そこでベネッセ教育総合研究所グローバル教育研究室では、根岸先生にご指導いただきながら「英語力を伸ばしている学校の要因を探る」というテーマのもと、2016年度から調査研究を開始しました。
この調査研究では、GTEC for STUDENTSを英語力の指標として用いて、学校単位で受験した高校の1年次から3年次へのスコア(「話す」を除く3技能のトータルスコア)の伸びを比較しました。調査対象校全体の2年間のトータルスコアの伸びの平均は71.7点で、100点以上伸ばしている学校もある一方で、ほとんど伸びていない学校もありました。スコアの伸びの著しかった5校について、英語教育の在り方を資料やインタビュー結果から分析し、英語力の伸びの要因を探りました。
その分析結果から、英語力を伸ばしている学校に共通する要素が見えてきました。それを整理した4つの観点が以下になります。
① 英語の授業の「質」を高める取り組みをしている
② 学校・英語科全体での取り組みをしている
③ 生徒が英語学習に向かうための土台を作っている
④ 地域や学校の環境や文脈に沿った取り組みをしている
② 学校・英語科全体での取り組みをしている
③ 生徒が英語学習に向かうための土台を作っている
④ 地域や学校の環境や文脈に沿った取り組みをしている
①は当然のことながら、②~④の要素がそれを支える基盤として重要な役割を果たしていることが明らかになりました。この調査研究は高校を対象に行ったものですが、「話す・書く」アウトプット活動は、まず量を優先して小規模な話す活動を継続的に行うこと、CAN-DO目標を学校全体で作ってその目標に向かいつつ、先生の指導は個別に自由度があること、スローラーナーも活躍できる活動の工夫や学び合いのクラス作りなどの取り組みは、小学校・中学校の英語教育にも生かしていただけるものだと思います。この調査研究について、改めてまとめた記事がVIEW21教育委員会版に掲載されました。ぜひご一読ください。
2017年度は、スピーキング力を伸ばしている学校について、GTEC for STUDENTSの4技能のスコア分析をもとに継続研究を行っています。また、8月19日に開催される全国英語教育学会第43回島根研究大会でも研究成果の一部を発表します。その際の発表資料などの研究成果を今後も発信していく予定です。ご期待ください。