【回答:森上教育研究所】受験対策<その7>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。

中だるみしない夏休みの過ごし方をアドバイスしてください

夏の勉強法の質を高める方法を教えてください

志望校の出題傾向が子どもと合っていないようで迷っています

中だるみしない夏休みの過ごし方をアドバイスしてください

4年生の娘は、まだ塾には行っていません。これからの夏休み、家庭でどのように勉強を進めればいいのか、どうしたら中だるみしない夏休みが送れるのか、そのポイントをお願いします。
4年生の夏休みは、本人の学力にもよりますが、基礎学力をしっかり身につけてください。算数の計算を速く・正確にできるように練習することや国語の漢字や読書など、この時期でなければできないことを行ってください。不得意科目・分野・単元の克服に時間をかけられる良い機会でもあります。
受験学年の6年生で塾に通っていても「夏休みは中だるみが心配」という人が多く、4年生の夏休みを家庭学習で行う場合には、確かに、中だるみをしない工夫が必要です。当たり前のことですが、早寝早起きをし、食事時間を一定にするなど規則正しい生活をすることが基本です。

そして、子どもの状況に応じて無理のない範囲で、毎日、質の高い学習をできるだけ多く、コンスタントに行うことが最終的には満足のいく学習となるはずです。1日中机にしがみついていても、質の高い学習はできませんし、長続きしません。まとめて長時間やるより、毎日少しずつ、メリハリのある勉強をすることが大事なのです。
また、スケジュールを工夫することで、中だるみを防ぐことができます。例えば、夏休みを前期、中期、後期に区切って学習目標を設定します。それぞれの期の終わりに楽しいことを用意することで、自分自身の励みにすることができます。短期間に区切って目標を設定し、そのごほうびに楽しいことも盛り込むことで、子どもは頑張れると思います。

夏の勉強法の質を高める方法を教えてください

現在5年生です。長い夏休み、どのように学習を進めればいいのか、そのポイントを具体的に知りたいです。他の質問で、質の高い勉強が大切とありましたが、どのように学習したら質の高い学習になるのか、もう少し詳しく聞かせていただきたいので、よろしくお願いします。
「質の高い勉強」とは、「結果として成果が上がる勉強」です。子どもの学年・学力によって期待すべき目標は異なると思います。夏休みにどのような成果をあげたいのか? そのためには何をすべきか? 具体的には何を目標にすべきか? と結果から考えると良いでしょう。
前問は、4年生の相談でしたので、基礎学力をしっかり身に付けることが成果でした。今回は5年生なので、これまでに学んだ「受験の基礎」を完全に理解・定着できるようにすることを目標にしてはどうでしょうか?
夏休みには、夏期講習に参加して新しい範囲を学ぶことだけでなく、これまでに学んだ範囲の「受験の基礎」を身に付けるチャンスです。もちろん、不得意科目があれば基礎学力を付けることを目標としてもよいと思います。
「成果をあげるためには何をすればよいか?」ということですが、「受験の基礎」(テキストや問題集の例題に当たる部分)を理解・定着できるようにすることです。学期中は新しい範囲を理解するのが精一杯となりがちなので、夏休みで完全に理解し定着させてください。そのためには、今まで使用してきたテキストや問題集の例題を自力で解けるようになるまで、繰り返し演習することです。
目標としては、「いつまでにどれだけの演習を行うのか」という期限と「自力で解ける問題の割合」を設定すべきです。目標を達成するには、子どものモチベーションを継続させ、子どもが勉強に集中できるようにしてあげなければなりません。

志望校の出題傾向が子どもと合っていないようで迷っています

校風は子どもに合っているのですが、入試問題の出題傾向が子どもと合っていないようで、志望校としてめざしていくべきか、それとも校風も出題傾向も合った別の学校をめざしていくべきかを迷っています。現在5年生です。子どもと一緒に文化祭も見に行き、その学校が気に入ったようで、本人は第一志望としてめざしている学校があるのですが、その学校の入試問題を見たところ、短時間にたくさんの問題をこなしていかねばならない形式で、子どもには合っていないように思われます。このまま本人の意思を尊重して第一志望にしておくか、それとも別の学校を第一志望にして準備をしていくべきかで迷っています。
この時期に、お子さんが気に入っている志望校を変更するのはリスクが伴います。小学5年の中だるみの時期を乗り越えるためには、目標とする第一志望にどうしても入りたいという強い気持ちが必要になります。この時期に第一志望を変えることで、目標を見失い、やる気をなくす場合が多いのです。
「短時間にたくさんの問題をこなしていかねばならない形式」が第一志望を変える理由のようですが、受験において、問題を解くスピードは重要な要素のひとつです。受験本番では誰もが緊張しますが、スピードが遅い人は焦ってしまい力を発揮できないことがあります。逆に、スピードが速ければ、余裕をもって受験に臨めるので有利です。
スピードが遅い原因は、何ですか? 本人の性格や習慣に起因することと思いますが、訓練すればスピードを上げることはできます。受験間際になってからでは、かけになってしまいます。第一志望に合格するため、という明確な動機がある今がチャンスです。
問題を解くスピードが速くなったとき自分自身が変わったことに気がつくと思います。一つの目的のために自分自身を変えて、目的を達成することができたら、それはすばらしい体験となります。これからの子どもの人生において、中学受験で成功を収める以上に、大きな収穫となることでしょう。

プロフィール



中学受験と私塾、中高一貫の中等教育と私学を対象とする調査・コンサルティング機関。私塾に『中学受験研究』、私学に『私学中等教育』を月刊で発行している。「わが子が伸びる親の『技(スキル)』研究会」を主催している。

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