【回答:森上教育研究所】家庭学習・家庭内コミュニケーション<その2>
「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。
読書経験がありません
漢字練習を面倒くさがります
夏、あまり勉強に集中できませんでした
読書経験がありません
Q | 国語力をつけるには、本好きになるのが最適であるというお話を伺いました。マンガや図鑑は大好きなのですが、いわゆる書籍は宿題の読書感想文を書くときしか読んだことがありません。突然中学受験で取り上げられているような本を与えても絶対に読まないと思います。本好きになるきっかけをどのようにしたらつくれるでしょうか? |
A | 小学3年生で、勉強や読書が大好きな子どもは極めてまれだと考えたほうがよいと思います。お子さんは、マンガや図鑑が大好きなことから、将来、読書が好きになる可能性は高いと思います。中学入試の国語で出題される内容についての読書が、お子さんにとっておもしろくないのは、経験したことがないか、考える必要がない内容であるためで、将来は興味をもつ可能性があります。この時期に、読書を強制した場合、お子さんが読書を嫌うようになるリスクを考えると自然に読書に親しむよう、工夫をするべきです。 確かに、中学受験では、読書をしているかどうかで、国語は大きな差がつきます。中学入試に必要な読書は、出題される内容が限られているため、4〜5年生から読書を始めても間に合います。焦る気持ちを抑えて、まずは理科・社会から始めましょう。理科・社会も、勉強に関係する本を読んでいるほうが有利です。マンガや図鑑をどんどん読ませ、マンガで日本の歴史分野、図鑑で生物分野への興味を広げ、理科・社会での得意分野にしましょう。得意分野ができると、理科や社会が得意科目になる可能性があります。 4年生になれば、理科・社会のテストの成績が良いのは、マンガや図鑑の読書のおかげであることをお子さんは理解するでしょう。それができたら、次は、国語の成績を上げるためには理科・社会のように読書が必要であることを納得させればよいでしょう。 |
漢字練習を面倒くさがります
Q | 学校で漢字練習の宿題がわりと大量に出るのですが、小5の娘は、いくら言っても、1字1字を書くのではなく、10文字の練習をいっぺんに1画ずつ10回ずつ書いていきます。学校でそれをやっていて先日先生に書き直しさせられたそうですが、本人はいたってけろっとしており、相変わらず、家で漢字練習をしなくてはいけないときには、1画ずつ全文字分を書き終えていくやり方をしています。このままにしておいて定着するでしょうか? |
A | たいへんユニークなお子さんですね。「このままにしておいて定着するでしょうか?」と言われれば、「しにくい」と答えるしかありません。定着するにしても時間がかかり、効率が悪いと思います。やり慣れた方法を変えるのは誰でも抵抗があります。慣れてしまう前に変えさせなければ、変えさせるための時間もエネルギーもかかります。 やり方を変えさせるためには、「子どものやり方が、自分自身にとって損であることを納得させる」ことが必要です。 まず、どうして「10文字の練習をいっぺんに1画ずつ10回ずつ書くのか?」ということを聞いてください。おそらく、宿題を早く終わらせることが目的でしょうが、そこで「そんなズルイやり方は…」のように否定するだけでは解決になりません。 次に、子どもの方法が、目的である「宿題を早く終わらせること」になっているか? を実験してみます。ここで親も実験に加わることが、子どもを納得させられるかどうかのポイントとなります。 その方法は、次のとおりです。 まず、10文字の練習を、通常の方法と子どもの方法の両方でタイムを測定します。通常の書き方に慣れている親は通常の方法のほうが早いと思います。子どもの方法に慣れている子どもは、通常の方法よりも早く書けるかもしれませんが、ここで大事なのはタイムの差です。子どもの方法と通常の書き方で、どれだけの時間差があるか? を子どもに実感させることです。多少早く書けても、差はほとんどない。慣れてしまえば、親のように通常の方法が早いことを説得できると思います。 さらに、10文字の漢字を2セット用意し、通常の方法と子どもの方法で練習させ、1日後に10文字中5文字の読み書きをテストします。どちらの漢字練習方法の方が、定着率がよいかを子どもに実感させてみてください。 漢字練習の目的は、読み書きをできるようにすることだということを、教えてあげましょう。 |
夏、あまり勉強に集中できませんでした
Q | 6年の夏は、受験の決め手といわれるのに、あまり勉強に集中できなかったようです。水泳の大会などで疲れ、塾に通っているだけで安心してしまい、成績はあまり上がっていません。2学期から、本気になって勉強に向かわせるためには、どうしたらいいでしょうか? |
A | 天王山の夏休みに、あまり勉強に集中できなかったのは痛手ですが、いくら悔やんでも取り返しがつきません。おそらく、お子さんも少しは悔やんでいる気持ちがあるはずです。2学期から本気になって勉強に向かわせるためには、8月が大切です。 お子さんが悔やんでおり、これまでの遅れを少しでも取り返そうという前向きな気持ちが加われば、夏休み終盤の1週間、いや2〜3日でも、集中して勉強することができるはずです。お子さんを前向きな気持ちにするためには、「今日、がんばることが、合格につながる。あきらめたら、そこで終わる。まだ時間は残っている」ことをお子さんが納得できるようにわかりやすく話してください。 夏休み終盤でつかんだ調子は、9月に入っても継続させます。夏休みの終盤でやっと調子がでてきたという自信と、人よりも遅れている分を9月に取り返そうという気持ちがあればきっとできるはずです。一般的に、夏休みにがんばった子どもは、一度9月にペースを落とします。そうしなければ、精神的にも体力的にも疲れきってしまうからです。お子さんに体力があれば、9月以降もペースを保ちながら一気に受験に突入するのが理想的です。このようなビジョンを話すことも、お子さんを前向きな気持ちにさせるために必要です。 |