【回答:日高のり子・森上教育研究所】志望校選び<その4>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。


【回答:日高のり子・森上教育研究所】志望校選び<その4>

偏差値が上がるようがんばるか、偏差値に見合った学校か、迷っています

学力・協調性を伸ばす学校、世界的な視野を学べる学校の見つけ方は?

何校かの候補の中から、第一志望校を決めるポイントは?

偏差値が上がるようがんばるか、偏差値に見合った学校か、迷っています

子どもが希望している、運動部の活動が盛んな2つの学校の見学説明会に行きましたが、まだ偏差値が達していません。このままがんばって偏差値を上げて進むか、偏差値に合った学校を選ぶか迷っています。
【森上教育研究所】
文面からでは、(1)お子さんと志望校との偏差値差は? (2)お子さんの学年は? (3)志望校を変更したときのお子さんへの影響は? などがわかりませんが、以下のように考えられます。

(1)偏差値は受験生の順位を示す数値です。自分よりも偏差値が上の受験生を追い抜き、下の受験生に追い抜かれないようにがんばらなければ、偏差値を上げることはできません。偏差値は1年間で10上げるのが限度で、5〜7上げられればよいとすれば、志望校との偏差値差がどの程度かによって、志望校を変えるかどうかを検討すべきです。

(2)お子さんの学年にもよります。例えば、お子さんが6年生で、志望校との偏差値差が10以上であれば、お子さんの偏差値に合った学校を検討すべきかもしれません。しかし、お子さんが5年生ならばどうか? また、お子さんが6年生で偏差値差が5〜7ならばどうかを、志望校を見すえてご自身で考えてみるとよいでしょう。

(3)子どもの成績に合わせて目標となる志望校ランクを下げてしまうと、子どもは安心してしまい、勉強しなくなることも多いのです。また、入試直前にお子さんが気に入っている志望校を変更すると、受験勉強に対するやる気を低下させる可能性があります。特にお子さんが6年生であれば、入試直前での志望校の変更はなるべく避けるべきでしょう。
(1)〜(3)をお子さんに当てはめて、志望校を検討してはいかがでしょうか?

【日高のり子さん】
今お子さんが何年生なのかわかりませんが、お子さんが希望している学校の受験をやめてしまうことは、モチベーションを下げてしまうので、希望はそのまま残しておいたほうがいいと思います。これからどれだけ伸びるかわからないですものね。
ただ親として、偏差値に見合った学校でお子さんが気に入りそうなところを探すこともされたほうがいいと思います。その学校を見つけたときに、2校のうちどちらにするのか、受験日などを考慮して決められるといいと思います。

6年生ともなり受験が近くなると、子どもも模試を受けたり過去問を解いていくなかで、いちばん好きな学校は何があってもあきらめたくないとか、いちばんとまではいかないけれど、いいなと思えて偏差値が届いている学校があると安心だなとか、いろいろわかるようになってきます。それから絞り込んでも遅くはないと思います。

学力・協調性を伸ばす学校、世界的な視野を学べる学校の見つけ方は?

入学してから、さらに学力や協調性などを伸ばす学校や、日本国内にとどまらず世界的な視野・思考について学べる学校を知りたいです。多くの学校の中から、そのような学校を見つけるにはどうしたらよいか教えてください。
【森上教育研究所】
放任主義で生徒の自主性を重視する学校よりも、多少管理が厳しくとも面倒見重視の学校のほうが協調性を伸ばすことができると思います。自主性重視の学校では協調性がない生徒でもやっていけるので、協調性を身につける機会も少ないのではないでしょうか。

面倒見重視の学校を学校案内で絞り込み、次に学力を伸ばしている学校を探します。急激に学力を伸ばしている学校は、(1)生徒のモチベーションが高く、(2)学校運営がしっかりしていることが学校調査のデータでわかっています。
そのような学校の見つけ方ですが、例えば、(1)文化祭で学校訪問をしたときに、在校生の観察を行い「全体として活気があるか? 在校生の言動にやる気を感じるか?」などを調べます。(2)学校説明会で学校訪問をしたときに、全体の流れに注目し、「行事として円滑な運営がなされているか? 重要なポイントをはずしていないか? 」などを調べます。(1)(2)は、複数の学校で比較すればわかってきます。

「世界的な視野・思考について学べる」というのは、海外研修に代表される、国際的な視野を生徒にもたせるための学校の取り組みだと思いますが、単に海外研修を行っているかというだけではなく、海外研修前後の取り組みとして、海外研修を起爆剤とした学習がどれだけ・どのように行われているかを調査すれば、その学校の世界的な視野・思考がわかると思います。

【日高のり子さん】
友達と協力して何かをやるということが、協調性を学ぶということだと思います。クラスごとで勝敗を争う、球技大会、合唱祭、グループでの研究発表や林間学校など、協調性が養われるイベントは、多かれ少なかれどの学校にもあると思います。これらは、説明会でいただける年間行事日程表に書かれているのでチェックしてみてください。

世界的なというところですが、私が説明会に参加した学校に、人前で自分の意見を発表したり、意見を戦わせることの苦手な日本人が、国際社会で負けないようにするために、授業にディベートを取り入れているという学校がありました。

何校かの候補の中から、第一志望校を決めるポイントは?

学校祭を見て、3校ほど親子でいいと考えている学校があります。偏差値的にはほぼ同レベルです。どの学校を第一志望にするか、決め手はあるのでしょうか。
【森上教育研究所】
偏差値がほぼ同レベルというのは困りますが、3校も入学したい学校があるというのはすばらしいことです。
入学したい学校は、入学後に「わが子に合った学校」となる確率が高いので、第一志望校・併願校とも入学したい学校を探すべきです。なぜ入学したい学校なのか、学校のどの部分を気に入ったのかを明確にし、少なくとも学校の中身となる教育方針と校風をきちんと見極めた学校でなければ、志望校にすべきではありません。

確かに、入学したい学校は「わが子に合った学校」となる確率が高いのですが、せっかく第一志望校に合格しても「わが子に合った学校」でなければ意味がありません。私立中学校の在籍者に行ったアンケートのデータでは、入学前に教育方針・校風を見極めることができれば、在籍校が「わが子に合った学校」になる確率が非常に高くなるという結果が出ています。
教育方針が、入学後も入学前の予想と同じだった場合は、在籍校が「わが子に合った学校」となる確率は100%で、入学前の予想と異なった場合は64%。校風の場合は、入学後も入学前の予想と同じ場合は86%で、異なる場合は72%でした。

データから見ると、教育方針を見極めることが肝心のようです。気に入っている3校のうち、教育方針を見極められた学校はどれでしょうか? その学校を第一志望校にすると「わが子に合った学校」に入学できる確率がさらに高くなります。

【日高のり子さん】
3校とも第一印象がとても良かったということですね。では第2段階として、もう少し細かくチェックしてみてはいかがでしょうか。親目線で、教育方針に自分の求めているものと重なる部分がどれくらいあるか。カリキュラム、部活動、登校時間を考えて、お子さんがついていけるかどうか…など、入学後の生活を想像してみると優先順位がつけやすいかもしれません。

お子さんについては、一つひとつの学校についてどんなところが良かったか、在校生の印象、体験した部活動の感想などを、インタビューするように質問しながら意見をまとめ、好きな順位を決めていくといいと思います。

決められないようなら、オープンキャンパスや学校体験などを利用して、確かめる意味でもう一度学校に行く機会をつくると、ただ見に行ったときよりも目的がはっきりするので、選びやすくなると思います。

プロフィール



【日高のり子】『タッチ』(浅倉南役)、『となりのトトロ』(草壁サツキ役)でも大活躍の声優。ブログ「日高のり子の中学受験ホンネで語る成功と失敗」が人気。
【森上教育研究所】中学受験と私塾、中高一貫の中等教育と私学を対象とする調査・コンサルティング機関。

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