【回答:日高のり子・森上教育研究所】志望校選び<その5>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。


【回答:日高のり子・森上教育研究所】志望校選び<その5>

中学受験がダメだった場合、公立に進ませることに悩んでいます

妥協せず、本当に合う学校を見つけるには?

学校の方針と実際とのズレを見極めるには?

中学受験がダメだった場合、公立に進ませることに悩んでいます

中学受験がダメだった場合は公立に、と子どもには言ってきましたが、考えてもいなかった学校を塾で第一志望にすすめられ、とまどっています。公立に進学し、塾に通い、高校受験で同じ私立高校にリベンジとも思っていますが、公立中学出身のお子さんとは微妙な温度差が生じるらしく、実際になんとなくそう感じるところもあります。どこでもいいからとにかく合格を、とも思えず、かといってもしもの場合には公立に進学させてよいものか悩んでいます。
【森上教育研究所】
親子で考えていた志望校がダメで、公立校に進学することになった場合、また、考えてもいなかった私立校に進学することになった場合、入学後の学校生活はどのようになるかが問題です。どちらの学校に進学させるかよりも、最終的に、お子さんが入学後により満足できる学校生活が送れるようにするにはどうしたらよいかを考えるべきです。

満足できる学校生活を送るためには、どのような学校に進学させたらよいか、をアンケート調査したところ、(1)お子さんが入学したかった志望校、(2)お子さんと同等またはそれ以上の能力をもつ生徒が多い学校に進学させると、より満足度の高い学校生活が送れるという結果が得られています。

塾がすすめる私立中学は、お子さんが入学したい学校か、また、お子さんと同等またはそれ以上の能力をもつ生徒が多いか、親子で学校見学に行って確認してください。公立中学や他の私立中学も同様に、学校見学に行って納得がいく第一志望校と併願校を見つけてください。

学校は、先生や教育システムも大事ですが、そこに集う生徒が最も大事です。どんなに優秀な生徒でも、長期間、学習意欲が低い生徒しかいない環境にいると同化してしまいます。
志望校には、(1)と(2)の条件を兼ね備えた学校を選定すべきでしょう。

【日高のり子さん】
私だったら…という立場で考えると、まずすすめられた学校の説明会に行ってみます。
それから地元で通えそうな公立中学について調べてみます。同じ公立でもカラーが違うようなので、実際に通っていらっしゃるかたの生の声を聞いてみます。
それから子どもと話し合って、公立に通い高校でリベンジ受験をするか、「考えたことはない学校だけど、ここもいいかもね」になるのか、決めたいと思います。ただ公立と私立ではカリキュラムに違いがありますので、そのことも考えて選んでくださいね。
それと同時に、今まで見ていなかった学校にも目を向けて足を運んでみると、よい出合いがあるかもしれません。
最後までねばり強くあらゆる可能性を考え、どこでもいいではない、「ここがいちばん!」を探してみてください。

妥協せず、本当に合う学校を見つけるには?

将来を見据えた進学を念頭において学校を選ぶのか、6年間有意義に過ごすことができる環境を選ぶのか、迷っています。学校選びの選択肢は多いですが、納得のいく学校を選ぶとなると妥協はしたくありません。本当に合う学校を見つけるにはどうしたらよいでしょうか。
【森上教育研究所】
「わが子に合った学校」かどうかは、その学校に入学してみなければ実際にはわからないものです。理解していたはずの志望校の教育方針・校風でさえ、入学前に思っていたものと違っていたという保護者が50%もいるというアンケートデータがあるくらいです。

「6年間有意義に過ごすことができる環境」の学校とは、どのような学校なのかは個人によって異なるので、適切な回答はできないかもしれませんが、大学合格実績は悪くとも、部活や生徒会活動などが充実していて楽しい学校生活を送れる学校ということでしょうか? もちろん、どちらが優先事項かという価値観の問題もありますが、両立することは考えられませんか?

両立できる例として、部活や生徒会活動が盛んな進学校や、大学進学が保証されていて、部活や生徒会活動が充実している大学の附属校があります。どちらにしても、進学か部活・生徒会活動のどちらかの二者択一である必要もないと思います。

大学合格実績が同程度の学校は、偏差値も同程度だと思うので、同程度の偏差値の学校から「6年間有意義に過ごすことができる環境」の学校を選べばよいと思います。

【日高のり子さん】
学校に通うのは子どもなので、本人がどこに通いたいかということもとても大切です。
6年間を有意義に過ごし、いい友達ができれば、目標とする大学をめざしてがんばる力がわいてくるかもしれません。
それは進学校であっても附属校であっても同じだと思います。附属校で他大学受験をめざすのは大変かもしれませんが、進路を決める時期に自分のやりたいことが見つかって、附属大学に進まないことを決めた生徒は、受験勉強のために人より早く部活を引退するケースもあるようです。
納得のいく学校を選べたのかどうかは、結果を見ないとわかりません。よい結果を生むためにがんばれるかどうかは、自分がいきいきと過ごし、充実した日々を送れるかにかかっているといっても過言ではないと思います。
ご家族でよく話し合い、お子さんの特性も考えて、本当に合う学校を皆さんで探してみてください。

学校の方針と実際とのズレを見極めるには?

説明会などで聞く先生がたの方針と、実際の生徒のズレのようなものがあると思います。そのあたりを見極めるためには、どういうところに注意して見学などに参加するといいでしょうか。
【森上教育研究所】
「説明会などで聞く先生がたの方針」は、教育方針や校風のことだと思います。学校が掲げる教育方針や校風は、目標であり理想なのです。「実際の生徒」は教育方針や校風によって生まれた現実の結果です。現実は常に改善されながら理想に向かっていくものです。

そのような観点で考えれば、「学校が理想とする方針」と「実際(現実)の生徒」とのズレを感じるのは、当たり前ではないでしょうか? つまり、先生がたは学校説明会では理想を語り、一歩ずつ現実を理想に近づけていきたい、ということだと思います。選挙ではマニフェストが理想で、公約が実行されたかどうかが現実ですから、大きなズレは許されない公約違反となりますが、マニフェスト自体がなければ、実現したい理想もないということになってしまいます。

ある程度のズレは当たり前ですが、大きさが問題です。あまりにも大きなズレは、学校が受験生・保護者にうそを言っていることにもなります。しかし、実際の生徒=学校の理想であれば、それもまた問題で、上昇志向がない学校といわれてもしかたがありません。
「そのあたりを見極めるためには、どういうところに注意して見学などに参加するといいでしょうか」という質問ですが、説明会などで聞く先生がたの方針は学校案内の教育方針と校風にまとめてありますので、学校案内を読んで学校の教育方針や校風を理解し、学校見学で在校生の様子との違いを確認すれば、どれだけのズレがあるか見極められるでしょう。

【日高のり子さん】
学校の方針と実際のズレですが、多少はどこの学校でもあるのかもしれませんね。
目標に掲げたことを、実際に通っている生徒がどれだけ守れているかということですものね。それは実際に学校を見学されれば、ある程度わかるのではないでしょうか?
例えば、校則で決まっていることを守れなかった生徒に対して、学校がどういう対応をとっているかということで、そのズレ幅も違ってくるかもしれません。
大切なのは、学校側がその教育方針を守るために、どんな努力をしているかということだと思います。それを確認するために、先生に質問してみてはいかがでしょうか。

プロフィール



【日高のり子】『タッチ』(浅倉南役)、『となりのトトロ』(草壁サツキ役)でも大活躍の声優。ブログ「日高のり子の中学受験ホンネで語る成功と失敗」が人気。
【森上教育研究所】中学受験と私塾、中高一貫の中等教育と私学を対象とする調査・コンサルティング機関。

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