本郷中学校1年生 A・Tさんのお母さま

4歳上の兄の受験を見ていて、自ら中学受験を希望。持ち前の負けん気を発揮して勉強にまじめに取り組んでいました。しかし、ここぞというときに限って実力を発揮できない弱さもあって、受験本番ではまさかの大波乱が待ち受けていました。 (2009年12月17日)


profile
本郷中学校1年生
A・Tさん

東京都在住。
Aさんは、2009年4月に本郷中学校に入学。現在中学1年生です。ご両親と現在高校2年生のお兄さんの4人家族。小さい頃から自立心が旺盛で、中学受験も自分で決意しました。今は野球部に所属して、勉強と両立させてがんばっています。

本人がやりたいと言って始めた塾通い。でも、最初は気持ちが先走りするばかり。新しい先生との出会いから、塾が楽しくなった。

中学受験を考えられた経緯から教えてください。

私自身が国立中学受験を経験していまして、そのときに得た友人が今の自分の財産になっているので、子どもたちにも、そのような出会いを与えたいと思っていました。本人も、4歳上の兄が中学受験をしたのを見ていて、「自分も受験をしたい」と言いました。生来負けず嫌いな性格で、「兄に負けたくない」という気持ちもとても強かったのです。
また、ここはクラスの大半が中学受験をするような地域で、皆さん教育熱心で、なんらかの塾に通っているお子さんがとても多いので、そんなことも影響したのでしょう。私としては、4年生になってから塾に行けばいいのではないかと考えていたのですが、本人が「僕は行かせてもらえないの?」とまで言うので、それなら、「楽しみながら考える力をつけてもらえれば」と考えて、3年生から四谷大塚のリトルスクールお茶の水校舎に入れることにして、4年生からはそのまま四谷大塚のお茶の水校舎に通いました。


塾が始まってからの生活はいかがでしたか?

御茶ノ水までは途中乗り換えもあったので、4年生までは送り迎えをしていました。
本人は、自分から行きたいと言いだして通い始めたものの、うまくなじめなかったようです。いちばんの理由は、がんばっていたのだけれど、思うように成績がとれないこと。5年生になると、微熱が出て迎えに行ったりすることもあるくらい、ストレスの影響が体に出てしまって大変でした。体調が悪いときには休みながら、なんとか続けていたという感じです。
今思うと、本人が低学年の頃に、私は兄にかかりきりで、あまり勉強を見ていなかったので、基礎的な力がついていなくて、マイナスからのスタートだったのです。本人は負けん気が強いのでがんばっていたのですが、人数も多いため選抜クラスに上がれず気持ちが空回りしていたのではないでしょうか。
この状態をなんとかしたいと思っていた頃、市ヶ谷に新しい教室ができることになり、塾にお願いして、6年生から教室を移りました。新しい環境にすぐなじめるタイプではないのですが、教室が変わってからは、塾が楽しくてしかたないようで、「迎えに来て」と言わなくなりました。しかし、市ヶ谷は上位クラスしかないので、その基準の成績をとらないとここにいられなくなるかもしれないというプレッシャーがありました。そこで、それまで続けていたスイミングを休むと本人が言いだしました。そのくらい、市ヶ谷教室にいたかったのでしょう。結果的には、目標としていた成績はとれませんでしたが、秋から武蔵コースに入れていただけることになり、ほっとしました。


志望校はどのように決めましたか?

実は兄の受験のとき、初めての受験ということもあり、親の希望に沿わせた感じがあったので、今回は本人の意思を尊重したいと思っていました。
兄のときは、最初主人が「わざわざ受験するなら、御三家クラスの学校に行かなければ意味がない」と言っていまして、本人はそれにこだわってめざしていましたが、成績が伸びきらず、最後の最後に志望校を変更し、芝中学校を受験し進学したという経験をしているのです。
兄の受験のときは、芝を見学に行ったときの在校生や学校の職員のかたの対応がとても親切で、本人は「ここが自分の居場所だ」と思ったようで、最終的には自分が行きたいと思った学校に進学できたわけです。しかし、どんなに気に入って決めた学校でも、そのあとは本人しだいですよね。大変なことも含めて、そこから何かを学ぶことがいい経験になると思えるようになっていました。
ですので、弟のときには、親としてどうしてもここに入れたいというこだわりはありませんでした。でも本人は、「兄に負けたくない」という気持ちも強く、自分と同じような成績からスタートして開成に合格した市ヶ谷校舎の卒業生の例を励みにして、夏休みまでは「開成をめざす」と言っていました。しかし、夏休み明けのテストで開成クラスの成績に届かず、武蔵コースに入ることになったわけです。
最初は開成に対する思いがあったようですが、やがて武蔵が第一志望になりました。本人は、自立心は旺盛ですが、どちらかというと決められたことをまじめにこなすタイプなので、親としては武蔵のような自由度の高い学校は合わないのではないかと思いました。けれども、本人がその気になっているのだし、縁あって合格できれば足りない面を伸ばせるということだし、不合格なら合わなかったということだととらえて、応援することにしました。
2学期に入って、武蔵コースの勉強をするうちに、自分の考えを表現する楽しさに目覚めて、勉強が楽しくてしかたなくなり、ペンだこができるくらい問題を解いていました。


成績はどのように推移しましたか?

合不合判定テストでは、回によって成績の上下はありましたが、武蔵中学の合格可能性は、70%前後は出ていました。徐々に過去問の成績も上がってきていたので、可能性がなくはないと思う一方で、私は、「武蔵の対策をするうちに深く考えすぎる癖がついて、他の学校の問題に対応できるのだろうか」という不安も出てきました。
でも、本人が楽しいといってやっていることを否定することはできません。ですので、今やっている勉強はこの先の力になるはず、過去問の成績も上がってきたし、なるようになるさ! と自分に言い聞かせながら、受験に勝つための勉強より、どういう勉強をしているかということのほうが大事だ、と思うようにしていました。


プロフィール



教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

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