時代の違う話や自分に興味のない話になると読み取りができないことがある[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。



質問者

小6女子のお母さま


質問

読書は大好きです。文章を読むのには慣れているので早いと思います。本人は国語はテスト前に特に勉強しなくてもできると思っています。でも物語文は読み取れても、時代の違う話や、自分に興味のない主題の説明文になると、読み取りができたりできなかったりしています。入試を控えていますので、万が一本番で相性の良くない問題が出たらと思うと心配です。今から何かできることはないでしょうか。アドバイスがあればよろしくお願いします。


小泉先生のアドバイス

中学入試で頻出のテーマに関する知識を整理して持つ

物事に対して非常に「理論的」に、しかも「前向き」に取り組むタイプのお子さまです。また物事をまずは「大きく」とらえ、さらに重要な点については「詳細に」考えられるというバランスも備えているようです。まじめに知識を蓄えていけば順調に成績が伸びる、受験に向いているタイプと言えます。ご本人が、「国語はテスト前に特に勉強しなくてもできる」という自信を持つのも納得できます。ただし、ご質問のような「相性の良くない問題」に対しては対策を立てるべきだと思います。

まずは、「相性の良くない問題」とはどんな問題なのかを考えましょう。おそらく問題文を読んでいても、内容がビンビンと頭に入ってこないような文章のことでしょう。特に論説文で興味のない内容や抽象的な言葉がどんどん出てくるものだと、途中で投げ出したくなると思います。
これはお子さまばかりではなく、2学期以降の6年生がかかえる大きな問題です。そしてこの問題の本質は、「相性が良くない」のではなく、その文章に対する「知識不足」なのです。すなわち、問題文が非常に高度な内容なので、ある程度の知識を持っていないと理解できないということです。
「そんなに高度なの?」と思われるかたは、上位校の中学入試問題文をお読みいただくと良いでしょう。高校受験、場合によっては大学受験の問題文ではないかと思えるほどの文章が頻出しています。もちろん設問で問題の難易度はある程度調整できますが、何も準備していない受験生であれば、問題文を読むだけで「ダメだ、わからない!」という状態になってしまいます。
これは考えてみれば当たり前で、入試問題以外でそのような高度な内容の文章を読む機会はほとんどないからです。お子さまのように読書が大好きな子どもでも、大人向きの新書や中高生向きの「岩波ジュニア」を愛読している(恐ろしい?)小学生はあまりいないと思います。そして中学入試における論説文の出典は、まさにそういったところからです。「理解できない」「問題が解けない」「知識が足りない」のは当然のことです。

それでは、どんな準備をしたら良いのでしょうか? まずは志望校の過去問を演習することで、難しい文章に慣れていって下さい。復習もしっかり行うことで、最初は読み難かった問題文も、少しずつ読みやすくなると思います。ただし、国語の場合は同じ問題文をくり返し演習することはおすすめしません。志望校の過去問をやり終えたら、同レベルの問題を解いていくと良いでしょう。
また過去問を演習する時は、その問題文の「テーマ」を意識してください。学校によっては、頻出の「テーマ」が顕著な場合があるからです。たとえば麻布中学校では物語文1題の出題が定番であり、よって「父母子」や「友人(友情)」のテーマが多く出題されます。また、「生命・死」に関するテーマも多いことに驚かされます。こういった情報を事前に知り、しかもそれらのテーマに関する考え方を持っている生徒は、持っていない生徒よりも格段に有利になります。

しかし、過去問題集にはせいぜい過去10年分の問題しかありません。中学入試全体における、最近の頻出のテーマに関する知識が必要です。参考書として、拙著『必ず出てくる国語のテーマ』(ダイヤモンド社)をおすすめします。この本では、首都圏の上位100校における国語の頻出テーマとその考え方がまとめてあります。
お父さんやお母さんであれば2~3日で読める内容ですから、時間がない場合はご両親が読んで、そのエッセンスをお子さまに伝えるのが一番効率的だと思います。論説文であれば「言語・コミュニケーション」や「文化・習慣」、物語文であれば「友人と友情」や「兄弟・姉妹」など頻出テーマごとに記されています。

テーマに関する知識は、5年生ぐらいから持ち始めるのが理想です。しかし入試直前の場合は、お子さまの苦手なテーマから優先的にマスターしていくと良いでしょう。「相性の良くない問題」を少なくするためには、頻出テーマごとの知識や考え方を持つことが有効ですからぜひ実行してみてください。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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