学校では全く話をせず、緊張で動作が遅くなることもあります[教えて!親野先生]

今週の相談

 

小学3年生の長女は、家では普通に話をしますが学校では全く話をしません。緊張で、動作が遅くなることもあります。今まで、母親である私が何とかしたいとあせって、鬱のような精神状態にまでなってしまい、これではいけない、いつか絶対に治る、と思い直しています。それでもこうして相談させていただいたのは、親野先生のご意見が伺いたかったからです。自然に治るとおっしゃるかたもいらっしゃれば、大人になるまで治らず困ることになるとの意見をいただくこともありました。現在は、カウンセリングを隔週で受けて、学校では、話すことを強制しないでいただいています。(すわのさん)

 

【親野先生のアドバイス】

すわのさん、拝読いたしました。

文面を見る限り、お子さんは「場面緘黙(かんもく)症」ではないかと思われます。私も何人か受け持ったことがあります。場面緘黙症には、次のような特徴があります。

  1、身体的には、話す機能に問題がない
  2、特定の場所や場面で、または、特定の人に対して話せない
  3、家では話せるけど、幼稚園、保育園、学校などで話せないというケースが多い
  4、特定の友達ができてその子となら話せるというケースもある。なかなか友達が
    できないケースもある
  5、原因は諸説あるようです。先天的な要素に原因を求める説もあります。

原因については諸説あるにしても、できるだけ早い時期に専門家の診察と治療を受ける必要があるということは確かです。現在、カウンセリングを受けていらっしゃるとのことですが、カウンセリングといっても多種多様です。

場面緘黙に関する知識のある人のカウンセリングなのでしょうか? もしそうでないのなら、専門家に見てもらうことを強くおすすめします。児童精神科医、臨床心理士、心療内科医、精神科医などだと思います。子どもによっては他の発達障害を併せもっている子もいますので、ぜひ受診してください。

場面緘黙の疑いで受診するのは、小学校に入学してからが多いようです。それは、幼稚園や保育園のときは、すごくおとなしい子だ、無口な子だ、くらいで済んでいたものが、小学校に入ると親が急に心配になることが多いからです。

たとえば、名前を呼ばれたときの返事や授業中の発表ができないなどで先生から指摘を受け、親が心配になって受診するケースが多いようです。でも、本当は、幼稚園や保育園でそれが疑われるときは、受診したほうがいいのです。早めに適切な診断を受け、治療を始めるに越したことはないのですから。

それに、生活のなかで気を付けることなども、教えてもらうことができますから。
さらに、それを幼稚園・保育園・学校の先生たちに伝えて、適切な配慮をしてもらうことができるからです。

場面緘黙の子の場合、症状が出るのがそのような場所が多いのですから、これはとても大切なことです。では、場面緘黙の子に対してはどのような配慮が必要なのでしょうか?

まず、一番やってはいけないのが、話すことを強制することです。親も教師も、「このままではいけない」「だんだん話せるようにしてやらなければ」という気持ちから、ついこれをしてしまいます。でも、これで場面緘黙が治ることはありません。それどころか、このプレッシャーは非常な苦痛であり、大きなストレスになるのです。

子どもによっては、そのせいで体が硬直してしまう子もいます。このような間違った指導が続くと、不安な毎日が続き、自分への自信もなくしますし、精神的なトラウマとなることもあります。特に小学校には、出席点呼、挨拶、発表、スピーチなどなど、いろいろなものがあります。「順番でお話しましょう」「授業中に1回は発表しましょう」などが、非常に苦痛なのです。

「お返事は?」などと返事を強制されることも、非常に苦痛です。元場面緘黙児だった人の書いたものを読むと、返事の代わりにさっと手を挙げるとか、こくんとうなずくなどの合図を決めておくといいとのことでした。

次に、子ども同士で「なんでしゃべらないの?」とか、たまに一声出したときに「あっ、しゃべった」などと言われるのもたまらないのです。ですから、先生からクラスの子どもたちにそのことに触れないように言ってもらう必要もあります。放っておくと、いじめの対象になることもありますので、注意が必要です。

次に、先生に友達関係での配慮をしてもらうことも必要です。私が受け持った場面緘黙の子には、友達が全くできなかった子もいました。その子はそもそも友達関係を求めていないように見受けられました。ですが、特定の少人数の友達ができた子もいます。

ですから、ケース・バイ・ケースで一概には言えないのですが、友達との人間的な交わりへの配慮も必要です。周りの気が合いそうな子に働きかけて、遊びに誘ってもらうようにするのです。

次に、先生からその子への温かい人間的な声かけや働きかけも大切です。「元気そうだね」「今日はにこにこしてるから、いいことあったんだね」「○○君はいつも係の仕事がんばってるね」など、なんでもいいのです。自分で話しかけて、自分で答えるのでもいいのです。相手からあまり反応がないからと言って、働きかけなくていいというわけではないのです。
場面緘黙の子の場合、そもそも反応を求めてはいけないのです。反応を求めずに、それでも声をかけ人間的な働きかけをすることが大切です。にっこりうれしそうな表情になる子もいれば、後で、日記で先生にこう言われてうれしかったと書いてくる子もいます。

私なども、ずいぶん後になって作文で「先生にあのときこう言われてうれしかった」と書いてくれたのを読んで、感動したことがあります。外に出る反応や表情に乏しくても、心の中ではすごく反応していることを忘れてはいけません。もしかしたら、すぐに反応や表情が出ないぶんだけ、心の中で深く感じ取っているのかもしれません。

次に、日記や作文などで自己表現できる子もいますので、それを活用してコミュニケーションをとる方法もあります。これは、とても有効です。宿題として全員に書かせていなくても、その子とだけの交換日記という形でもいいと思います。

とにかく、家でも学校でも、不安や緊張やストレスを取り除き、安心して明るい気持ちで生活できるようにしてやることが大切です。そういうなかで、親や教師からの温かい愛情を感じたり、友達との心の通い合いを経験したりすることが大事です。

そのためには、学校では先生による特別な配慮が絶対に必要です。ですから、場面緘黙の子をおもちのかたは、毎年担任の先生が決まったらできるだけ早く直接会って話す機会をもつことをおすすめします。我が子が場面緘黙であることと、場面緘黙の子にどのような配慮が必要かを伝える必要があります。指導上の配慮事項を書いたプリントなどを渡しながら依頼すると、効果があると思います。検索サイトで「場面緘黙」と入れて検索すればかなりの情報が手に入りますので、それを活用してもいいでしょう。

すわのさんは、既に担任の先生に配慮を依頼しているようです。さらに、私が書いたようなことや新しい情報で新たに依頼したほうがいいことがありましたら、どんどん伝えていくといいと思います。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。すわのさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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