中学受験模試の「親技」後編

「模試の活用」次第で、合格力はまだまだアップする

前編にひきつづき、ストロング宮迫さんに中学受験模試の「親技(おやわざ)」を伝授してもらいます。模試を受けることによって起こる心配事に加えて、今の時期から入試直前期、その後の時期についてもお話しいただきました。ここで不安をスッキリさせて、お子さんのラストスパートを応援しましょう!


究極の家庭学習法は「親技」

――勉強時間を増やすときに注意することは?

勉強時間はそのままに、子どもの頭の中を把握・整理して子どもの負担にならないように「今はこれだけ。次はこれ」と目の前に課題を出していけば順調に成績が上がるはずです。「親の言うとおりに勉強すれば成績が上がる」という意識を子どもが持てればしめたもの。信頼関係が築かれ、親のマネージメントに加えて子どものやる気が高まると、学習時間を増やすことも比較的うまくいきます。一番まずいのは「あれをやれ、これをやれ。もっと勉強しろ」と言って、親の言う通りにやったのに成績がさっぱり上がらないこと。「どうせ親の言うことを聞いても成績が上がらないのならズルしてさぼっても同じこと」と子どもは逃げに走ってしまいます。

勉強量が増えることを喜ぶ子どもはいないと思います。まずほとんどは拒絶するものです。効率的に成績を上げるためには子どものやる気は不可欠です。親の究極の役目は子どもの勉強意欲をノリノリにさせることです。

模試の復習で、同じ問題をくり返しやるのに飽きて、答えだけを覚えてしまう子もいると思います。しかしこれは様子を見ていたら解いていないことはすぐわかります。くり返しやるときには時間を短く区切ってやらせたり、かかった時間を書き留めて時間が短くなったのがわかるようにしたりして、ゲーム性をもたせる工夫をしてください。

復習をやったらシールを貼っていくなど、ちょっとした工夫で子どものやる気は起きるものです。ご褒美などもモチベーションを維持する効果的な方法ですね。ご褒美ほしさに習っていないところを適当に半分くらいやって終わらせてしまう子も中にはいます。そうさせないように保護者のかたがチェックして、やるべきときにやるべきことをきっちりやらせてください。

親が子どもの学習を管理することで、成績はポンと伸びるのですが、親の負荷が高いだけに間違ったやり方をしてしまったら子どもにとっては過度な負担となり逆効果になってしまうこともあります。子どもの性格を見極め、ノリノリになれる方法を探すことも親に必要な「技」です。


合格判定はどう読むか?


模試の結果を見て、数字にとらわれすぎないようにと言ってきましたが、結果表の数字で参考にしてほしい部分もあります。それは合格判定の数字です。判定の精度は現在ものすごく高まっていて、相当正確に出てきますので子どもの学力レベルと学校レベルのマッチングの検討に役立ちます。合格判定結果は、ほぼ正確という理解で間違いないです。合格判定が良ければ志望校のランクを上げたり、悪ければもっと頑張るかレベルを落とすかなど、志望校決定の参考になります。うまく活用して受験に役立てていただきたいところです。

よくランクを下げてトップクラスで入るか、ビリでもレベルの高い学校に入るほうがいいか質問を受けることがありますが、私は絶対に後者をおすすめしています。「頑張ったもの勝ち」というか、合格に至るまでのモチベーションを高く保つことができますから。

合格判定が悪くても、そこで子どもを否定するような言動はしないように特に気をつけてください。模試の結果を一番気にしているのは本人です。成績が悪かったときでも、苦手意識を植えつけずに次に頑張る意欲を持たせる言葉をかけること、結果を冷静に見て可能性を見出してあげることは親にしかできません。ABCテスト分析の結果を生かしてよかった点を見つけて励まして学習意欲を低下させないこと、逃げの気持ちにさせないことが大事です。

今の時点で模試の結果が良くても、それに安心して気持ちを緩めないように気をつけてください。結果表の数字が良いとやはり親の気分も良くなるでしょう。しかしそこで親が満足してしまってはもったいないです。子どもは成績が良いと前向きになりますから、さらなる成績アップのチャンスととらえて、さらなる課題を与えましょう。どんなに成績のいい子でも、その子なりの課題は必ずあります。ABCテスト分析など活用して、課題を見つけてあげてください。

どのレベルにいても、現状に満足することなく上を目指すことが大事。模試の結果がどうであろうとも、次に頑張る意欲を持たせる言葉をかけてあげることが親の大事な役目です。


受験直前!子どもに自信をつける技

――これから受験に向けて気をつけることはありますか?

志望校が決まったからといって、早い時期から過去問に手をつけることはおすすめしません。過去問題は本番直前に最後の自信をつけさせるためにやるのがもっとも効果的な活用法です。また、過去問の取り扱いには細心の注意を払ってください。特に第1志望校の過去問には、よっぽどの自信がない限り手を出さないほうがいいでしょう。志望校の過去問題にチャレンジしていい点数がとれたらものすごい自信になりますが、もし不本意な点数になってしまった場合は逆にものすごく自信を失ってしまいます。塾などでは安易に過去問をやらせてしまう傾向がありますが、子どもの受験勉強の進み具合を見極めてやらせてください。

テスト直前の確認のために「まとめノート」を作ることもいいでしょう。例えば「BTB液の色をすぐに忘れてしまう」など、どうしても覚えられないこと、覚えてもすぐ忘れてしまうことをノートにまとめておきます。教科ごとにノートを作ってテスト前に見直すことで弱いところを集中的におさらいすることができます。「苦手なところは確認できたから大丈夫!」と自信を持ってテストに臨むことができます。かといって何でもかんでもノートに書くと分量が増えすぎて逆効果になりますから、書き込む内容は絞ってください。

体調管理に気を使いすぎないことも心がけてください。受験当日カゼをひかないように細心の注意を払い、熱があるからといって大事をとってすぐ休ませたりしていると当日に限って体調が崩れたりします。体調が悪いときには勉強せずに休むのではなく、「今日は具合が悪いから、これだけにしよう」と勉強量を減らすのです。そうして多少調子が悪くてもやっておけば、受験当日に体調が崩れても「前に熱が出たときこれだけやれた」という自信になって乗りきることができます。


本当に大切なのは「合格」ではない


ここまで、具体的な勉強方法や模試の活用法をお話ししましたが、勉強は中学に合格するためにするものではありません。私は「勉強の意義をどこに見出すのか」ということが一番大事だと思っています。

難関私立中学合格を目指してがむしゃらに勉強したとします。そしてやっとの思いで合格した後、そこで何をしたいのか、さらにどこを目指すのかがはっきりしていないと、中学合格で燃え尽きてしまい、先を目指す気力が残らないでしょう。それから先その子は伸びていきません。

中学受験の競争率は高いので合格するとは限りません。中学合格を目標に勉強していたら、合格できなかったときその先がまったく見えなくなってしまいます。落ちてもその先の人生が続いていきます。受験の合否で人間の価値が決まることはありません。仮に落ちてしまったとしても、保護者のかたは子どもが自分の存在意義を認められる言葉をかけてあげてください。「合格はできなかったけれど、あなたの存在価値は何も変わらないんだよ、この先にあなたは伸びる可能性をたくさん持っているんだよ」と子どもがこの先の希望を持てるように接してください。

合格したあとにさらにどこを目指すのか。そのために今どんな勉強をしなければならないのか共通認識をもち、親子の信頼関係を築くことが受験を乗りきるための重要なファクターになります。今一度「何のために中学受験をするのか」を話し合いましょう。中学受験はもっと先の目標を達成するための一通過点に過ぎません。同様にして高校、大学と、将来の夢に向かって思いきり頑張っていただきたいです。


プロフィール



これまで1000人以上の子どもたちに中学、高校、大学受験の指導を行い、集団授業、個別指導、家庭教師の授業形態を経験する。その過程において、親が勉強を教えることなく、子供の頑張りはそのままで成績を上げる「親技」を構想。

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