世田谷学園中学校1年生 Y・Yくんのお母さま

今回は、女の子と男の子お二人の受験を経験されたお母さまにお話を伺いました。お姉さんは現在大妻高等学校に在学。弟さんは今年世田谷学園中学校に進学されました。お母さまによると「なかなかその気にならなくて、とても大変だった」という弟さんのエピソードを中心に、お話を伺いました。

転塾も経験。そのときにできる最善の方法を探しながら、最後までお子さんと二人三脚で頑張って志望校合格を勝ち取ったYさん。どんな受験だったのでしょうか・・・。


profile
世田谷学園中学校1年生
Y.Yくん

2008年4月に世田谷学園中学校に入学したばかりの1年生。横浜市在住。
家族は、現在大妻高等学校に通うお姉さんと両親の4人。
「じっとしていることが苦手で、勉強しながら足でサッカーボールをけっている」という元気な男の子。小学校の時からテニスを続けていて、中学校でもテニス部に入部。お母さまいわく、「行かれると思っていなかった志望校に合格して、毎日元気に通っている」とのこと。

姉は受験直前に父の海外転勤が決定。帰国後復学できる学校を探して受験。

お姉さんは今高校2年生ということですが、その時はどんな受験だったのでしょうか。

長女の場合、中学受験をするつもりで塾に通って準備をしていたのですが、6年生の1学期に主人の海外転勤が決まりまして、転居することになったのです。しかし、娘が「ここまで頑張ってきたのだから日本で受験をしたい」と言いまして、帰国後に復学できる学校という条件で受験校を当たって、1月に主人を残して一時帰国して受験。第一志望だった大妻中学校に入学できたので、1年生の1ヶ月だけ在籍してまた海外に戻ったのです。学校もお友だちも、「また戻ってきてね!」とやさしく送り出してくださったので、帰国後もスムーズに復学することができました。

弟はその時3年生。転勤先には日本の塾の分校があったので、勉強する習慣をつけるために、一応週1回通っていました。海外にいるとのんびりしているのですが、逆に周囲にあおられずに自分のペースが保てたことは、本人にとってとてもよかったと思います。

弟は小学4年生で日本に帰国。その後、3回塾を変わることに。

帰国されてからすぐ塾に通われたのですか。

はい、姉がお世話になっていた先生がいらっしゃる中規模塾に、弟もお世話になることにしました。同級生のお友達は、すでに受験に向かってまい進している感じでしたが、本人はあくまでもマイペース。塾では真ん中のクラスでしたが、頑張って上のクラスに上がりたいという気持ちもなく、なんとなくこなしているだけで、1年間通っても成績は伸びませんでした。

通っていた塾は四谷大塚のテキストを使っていたので、1週間単位で課題と確認テストがあるのですが、その課題がこなせず、テストも結果がでないということの繰り返し。「息子にはこのシステムは向いていない。このまま続けていても意味がない」と思い、ここは思い切って仕切りなおして、私がひざを付き合わせて一緒に勉強をしようと、塾をやめさせることにしました。

考えてみれば、本人には受験しようという強い意志があるわけでもなく、言われないとやらない子でしたから、塾に行く以前の問題で、この結果も当然かもしれません。それからは、算数だけは他の塾で見てもらいながら、テキストを自宅で一緒に解いていました。


そのまま家庭学習だけで受験されたのですか。

いいえ、1年間そんなことをしていたのですが、いよいよ6年生になるという段階で、同じテキストを使っていて実績も出している大手塾に入れることにしました。あれほど、授業→課題→テストというシステムは向いていないと思ってやめたのに、受験をするならやはり最後の1年くらいはシステムのしっかりしたハードなところで勉強したほうがいいのではないかと思いなおしたのです。今度はついて行ってくれるのではないかという期待があったのです。しかし、やはりうちの子どもには向いていませんでした。ああいうシステムは自分で勉強できるある程度力のある子どもには向いているのでしょうが、競争意識や上昇志向もあまりないうちのような子どもっぽい子には向いてないですね。

その塾は、システムはとてもしっかりしていますが、教育機関というより会社みたいで、先生も若い人が多く、子どもの悩みを相談してもマニュアル通りのような答えしか返ってこないのです。

1学期の間通っていましたが、とうとう行き詰まってしまいました。私が悩んで、「このままだとだめにしてしまう!どうしよう!」と家で言っていたら長女が「それなら最初に通っていた塾に行って○○先生に相談したらいいじゃない」と言ってくれて。今さら恥ずかしいと思いましたが、他に方法はないと、恥を忍んで4年生のときお世話になった中規模塾の先生に相談をしたところ、「一度連れてきてみてください」と言ってくださって、連れて行くことにしました。

本人はさすがに、「一度やめた塾にまた行くのはいやだ」といいましたが、出迎えてくれた先生が、「Yくんは再生して、またやる気になったんだよ」と前向きな言葉をかけてくれ、友達もすんなり受け入れてくれたおかげで、スムーズに教室に入っていくことができ夏期講習から転塾しました。

息子は、どちらかというと思ったことは口にしてしまうタイプで、疑問に思ったことなどを黙っていられないのです。そんな性格を面白いといってくださる先生もいますが、時には授業を脱線させてしまうこともあり、相性が悪いとぶつかってしまうことがある子です。それだけに本人を理解してくださる先生との出会いはとても貴重でした。

塾が合わないと、悩んでいる人は結構いらっしゃいますが、実際は、結局転塾しないケースが多いようです。しかし私は、本人が気持ちよく勉強できる環境を整えることの方が大事だと思い、実行したわけです。やってみて、結局は塾も先生次第だと思いました。皆が行っているからとか、実績を出しているからというだけでは尺度になりませんね。すべて出会いです。

プロフィール



教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

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