はっきりしない作文が多く、よくわからない文章になっています[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小3男子のお母様

質問
作文を書くのが苦手です。文の組み立てを考えずに書くせいか、文章の流れがとぎれとぎれで思いついたことを次々書くというような作文です。何を伝えたいのかはっきりしない作文が多く、よくわからない文章になっています。算数は全般的に得意なようですが、やはり文章題が少し苦手のようです。『チャレンジ』の問題などで、問題文の意味がわからないことがよくあり、「問題の意味がわからん」と言って投げ出すことがたびたびあります。理解力・国語力が乏しいのかと心配しています。

小泉先生のアドバイス
作文の「型」を教えることから始める

ご相談の中に「文の組み立てを考えずに書くせいか」とありましたが、「はっきりしない作文」の原因はまさにそこにあります。すなわち、「文の組み立てを考えさせる」練習をすれば、少しずつ良い文が書けるようになると思います。そのためには、作文の「型」を教えることから始めるとよいでしょう。
「型」というと非常に堅苦しく、子どもたちの自由な発想をじゃまするような気がします。中学校入試の記述問題ならともかく、作文ぐらいは自由に書いてもらいたいと思われるかもしれませんね。しかし、「自由に書きなさい」とか、「思ったように書きなさい」と言われると案外書けなくなるものです。まして、基本の「型」を持っていない子どもは、ダラダラととぎれとぎれに文を書いてしまいがちです。逆に、読んでいておもしろい作文やきっちりした文を書く子どもは、生まれながらに書く素質があるというよりも、今までの体験から書くための「型」をしっかりと学んでいる場合が多いようです。

それでは、「型」をどのように指導すればよいでしょうか。教えるべきことは、「何を」「どのくらい」「どのように」書けばよいかの見本と、見本どおり書くとうまく書けるということです。わかりやすいように、≪社会科見学でリサイクルセンターに行った時のことについて400字程度の作文を書く≫という想定で具体例を示しながら説明していきます。

まずお子さまに教えたいのは、作文の構造、すなわち「起・承・転・結」です。ただし、「転」はなかなかやっかいなので、「起・承・結」をマスターさせることにします。といっても、そんなに難しいことではありません。おそらく学校でも、「はじめ・中・おわり」というような呼び方で指導されていると思います。

「はじめ」の部分は導入です。内容的には、リサイクルセンターに行くことになったことや、それがどこにあるかとか、その日の様子などを書きます(例1参照)。全体で400字程の作文なら、「はじめ」の分量は100字を目安にします。わかりやすいように、「原稿用紙のココまでに書く」という線を引いてあげるとよいでしょう。
例1:「今日は、リサイクルセンターに行く日です。日頃からリサイクルには興味があったので、とても楽しみにしていました。」 など
次は「中」です。「中」は作文の中心であり、ここでは自分が見たり聞いたりして「感動したこと」や「強く印象に残った」ことを書けばよいでしょう(例2参照)。分量的には200字を目安にします。
例2:「たくさんのビンやカン、そしてペットボトルが集められ、種類ごとにつぶされていきます。その種類と数の多さに、本当にビックリしました。」 など
そして最後の「おわり」はまとめとして、全体の感想や意見を書きます(例3参照)。100字程度でよいでしょう。
例3:「お弁当やおやつを食べてとても楽しかったです。そして、リサイクルする時は、種類別に分けて、きちんと洗って出すことが大切であることがわかった社会科見学でした。」 など
さて、ここまで指示してもまだ書けない場合があります。そんな場合は、少し≪誘導≫してあげるとよいでしょう。たとえば、「おととい、リサイクルセンターに見学に行きました。」などの書き出しを指示し、さらに「天気はどうだったの?」「どのようにリサイクルセンターに行ったの?」など、お子さまにアイデアを与えながら書かせます。もちろんこれらの誘導は、お子さまがどうしても書けない場合であって、書くのを迷っていたり考えていたりしているのであればしばらく待ってあげていてください。

こういった指導を何回かくり返し、一人で書き上げられるようになったら、次はそれを評価してあげるとよいでしょう。その場合、注意すべきポイントは接続語です。子どもは、一つひとつの文はなんとか書けても、それらをつなげる接続語の使い方が苦手な場合がありますから、しっかりと添削してあげると文が見違えるようになります。
また一つの文はダラダラ続けるのではなく、30字~40字程度で短く区切ったほうが、読みやすい文になると思います。
さらに、「印象に強く残ったものは何か」「結論として何を書くか」などは書き出す前に考え、そこをめがけて書いていくとまとまった文になることも教えてあげてください。もちろん書きながら考えるということもありますが、事前に全体の構想があったほうが、文ははるかにまとまりやすいと思います。

このようにして何度も作文を書いていくと、「型」に慣れどんどん書けるようになっていくでしょう。そうなればしめたもので、徐々に「型」をそれほど意識しなくなり、やがては自由な作文を書き始める子ども出てくると思います。たとえば、「ガチャーン、メリメリメリ! カンやペットボトルが、次々につぶされていく。」などという文から始まる作文です。これは従来の「型」ではない、「型破り」の作文です。このような文をうまく書けた場合は、しっかりとほめてあげてください。あるいは、他のお子さんが書いた場合は、おもしろい作文の例としてお子さまに紹介してあげるのもよいでしょう。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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