校長・教頭先生も大変? 期待される仕事に変化‐斎藤剛史‐

小・中学校に子どもを通わせている保護者に、校長や教頭など、いわゆる管理職の先生はどう思われているでしょう。「偉い」「忙しい」などさまざまなイメージがあるでしょうが、その実態はあまり知らない人のほうが多いのではないでしょうか。国立教育政策研究所の調査(外部のPDFにリンク)によると、管理職に求められている資質・能力が10年前と比べて変化していることがわかりました。校長や教頭の在り方も変わりつつあるようです。

調査は2013(平成25)年5~6月、47都道府県と20政令指定都市の教育委員会を対象に実施し、うち66教委から回答を得ました。まず、公立小中学校の学校管理職において重視される資質・能力が過去10年で変化したかという質問に対して、「変化している」は37.9%、「変化していない」は34.8%、「わからない」は27.3%でした。「わからない」と回答した教委を除くと、全体の半数以上が学校管理職に求められる力が変化していると受け止めていることになります。10年前より重視されるようになった内容を自由記述から見ると、
 (1)危機管理……トラブル・緊急事態の未然防止や事後対応および防災や災害に伴う危機管理能力など
 (2)地域連携……保護者・地域・関係機関との調整力、学校外の教育資源の積極的な活用など
 (3)マネジメント……組織的・効率的な学校運営を行うことができる力、機能する教職員組織を育成するマネジメント能力など
 (4)人材育成……的確な指導・助言ができる力など
 (5)その他……学力向上、教員のメンタルへルスなど
といったものでした。

現在の校長や教頭は、災害やいじめ問題などへの危機管理能力、保護者や地域住民などとのコミュニケーション能力、教職員全体をチームとしてまとめるマネジメント能力などのほか、学力向上ばかりでなく教員の心の健康にまで配慮することが求められています。まさに、教育に対する識見があるとか、リーダーシップがあるなどといった昔ながらの管理職像では対応できない時代になっていると言えます。逆に言えば、それだけ現在の学校をめぐる状況が複雑化しているということでしょう。同時に、その責任はさらに重くなっています。
このような中で、教委の59.1%が学校管理職候補の育成・確保に課題があると回答しています。現在、ベビーブーム時代に大量採用された教員が一斉退職時期を迎えており、定年退職する管理職の穴埋めに教委は苦慮しているようです。さらに「(管理職候補の)対象年齢層に上昇志向が薄く、志願者の質と量の担保が懸念される」という声も出るほど、管理職になりたがらない教員が増えており、「管理職候補者の掘り起し」や「優秀な管理職人材を育成するための中堅層の人材育成」などが課題として挙げられています。管理職になることに魅力を感じる教員が少なくなっているようです。

このように校長や教頭に求められる力、取り巻く環境は、大きく変化しているということを保護者なども知っておくべきかもしれません。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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