算数の文章題が苦手です[中学受験合格言コラム]

「算数の文章題が苦手です」
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。

※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育発見隊通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。

質問者
相談者:小6女子のお母様

質問
算数の文章題が苦手です。読解力の問題なのでよく本を読みなさい、と言われますが本を読むのは好きなのです。割り算をすればよいのか、それとも掛け算か?というので混乱するようで、小数点や分数が入るともうパニックです。

小泉先生のアドバイス
本を読んで理解する力と、算数の文章題を読んで理解する力は必ずしも一致しない

「本を読むのは好き」ということですが、本を読んで理解する力と、算数の文章題を読んで理解する力(さらに解く力)は必ずしも一致しないと思います。なぜなら、算数の文章題には特有の≪約束ごと≫があるからです。

たとえば次のような問題を考えてみましょう。簡単な仕事に関する問題です。

例1
A君1人だと3日、B君1人だと6日かかる仕事を2人でいっしょにすると、何日で終わりますか。

仕事に関する問題を解くには、いくつかの方法があります。たとえば全体の仕事量を1とし、A君とB君の1日の仕事量を計算します。そしてそれらを足すことで、2人でいっしょにした場合の1日の仕事量を計算します。図で説明すると、以下のようになります。

〔解答例〕
全体の仕事量を1とする。(図1)
A君は3日かかるから、1日の仕事量は、
 1÷3=1/3(図2)
B君は6日かかるから、1日の仕事量は、
 1÷6=1/6(図3)
A君とB君がいっしょにする場合の1日の
仕事量は、
 1/3+1/6=1/2(図4)
ですから、仕事が終わるまでの日数は
(全体の仕事量は1であるから!)、
 1÷1/2=2(日)

さて、ここでの≪約束ごと≫とは、このような仕事に関する問題を解くには、「1日の仕事量」を考える必要があるということです。そしてこのような≪約束ごと≫は教えてもらって十分に理解しなければ、なかなか使えるようにはなりません。さらに十分に理解するためには、計算式だけではなく、上記のような「図」を使うことで、何をやっているのかを具体的に実感することが大切です。そういったプロセスがないと、数値が少し複雑になっただけでわからなくなります。

たとえば、次のような問題はどうでしょうか。

例2
A君1人だと0.4日、B君1人だと2日かかる仕事を2人でいっしょにすると、何日で終わりますか。

この問題では、A君の仕事量の図がかきにくいですが、考え方は同じです。

〔解答例〕
全体の仕事量を1とする。
A君は0.4日かかるから、1日の仕事量は、
 1÷0.4=10/4
B君は2日かかるから、1日の仕事量は、
 1÷2=1/2
A君とB君がいっしょにする場合の1日の仕事量は、
 10/4+1/2=10/4+2/4=12/4=3
ですから、仕事が終わるまでの日数は、
 1÷3=1/3(日)

算数の文章題を解くためには、≪約束ごと≫つまり問題に対する考え方を学ぶ必要があり、本を読む力とは別物であることを説明してきましたが、おそらくお子さまに今一番大切なことは、数式を図と結び付けて勉強することだと思います。それにより「自分は何をやっているのか?」を常に意識することができるようになるでしょう。問題演習を重ねることで、数式だけでも考えられるようになりますから、最初のうちはぜひ図を活用してみてください。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A