文章全体を見渡す問題ができません その1[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答し、実際にアドバイスを実践した結果どうなったのか?という追跡結果もお届けします。


質問者
東京都 M・Sさん(小3女子のお母さま)
子どもの性格: マイペースなコツコツ型、どちらかといえば受身タイプ。
志望校:未定だが、本人から受験をしたいと言い出した。

第一回目の質問
文章全体を見渡して解答する問題で正解することがなかなかできません
読解の選択問題や段落内に解答がある記述問題については正解を導くことができています。しかし、文章全体を見渡して解答する問題で正解することがなかなかできません。親が段落ごとに解説を加え、物語文であれば事件の前後の感情の変化を追いながら再度精読していますが、なかなか上手くいきません。また詩の読み取りの記述問題は答えが何も書けない状態です。

小泉先生の第一回目のアドバイス
物語文では、「人間関係」と「何が変わったか?」を考えさせてください。

論説文や説明文、物語文、詩についてのご質問だと思いますが、今回は物語文についてお話します。
まず「全体を見渡して解答する問題」というのはどんなものかと言うと、たとえば「――線A『……を思い浮べただけで、悲しくなった』、――線B『もう悲しくなったりしなかった』とありますが、この一郎(主人公)の変化について説明しなさい。」といったものでしょうか。この種の問題は最後のほうに出題されて、受験生を困らせている場合が多いようです。そして、こういった問題で合格点の答案を書くためには、「精読」の前に「速読」を行うことが大切です。
ここでの「速読」とは、「文章を速く読む」というのではなく、「文章を大づかみに読む」という意味でとらえてください。「速読」のやり方は非常にシンプルで、読んだあとで以下の二つのことを言えるようにするだけです。
(1)登場人物の人間関係は?
(2)何が変わったか?
「登場人物」が多い場合は、主要な登場人物のみをピックアップします。主人公を含め、せいぜい2~3人といったところでしょう。そして、彼らの関係を考えさせます。「親子」「友人」、あるいは「先生と生徒」といったところです。
そして次に「何が変わったか?」を考えます。ここで大切なことは、一つひとつの感情の変化などを追うのではなく、最初のほうと最後のほうで何がどう変わったかのみを考えるということです。変わったものは「気持ち」かもしれませんし、「人間関係」かもしれません。たとえば「最初は好きではなかったが、最後は好意を持ち始めた」ととらえるのです。ここまで言えたら、「なぜそのように変化したのか」の理由も挙げさせると良いでしょう。

さて、今回お話した方法と、今まで行っていた方法とは、どこが違うのでしょうか? それは今までの方法は、お子さまがすべきことが「多すぎる」ということです。
問題文は本に比べれば非常に短いとは思いますが、それでも多くの登場人物と多くの気持ちが出てきます。その一つひとつをとらえることは、子どもには最初はなかなか難しいのです。つまり一つひとつを考えていると「どれが大切なの?」「何が書いてあるの?」という状態になってしまうようです。「木を見て森を見ない」ということなのでしょう。
まずは大きく全体を考えるということで、「登場人物の人間関係」と「何が変わったか?」を考えさせ、物語全体の方向性をしっかりと理解させてください。そして例に挙げたような問題であれば、「気持ちがどう変わったか」と「その理由」を書けば良いでしょう。

私が物語文の授業を行う時は、必ず前述の二つを聞くことにしています。初めのうちはなかなか適切に答えられませんが、徐々に的を射た内容の答えが戻ってきます。そして慣れてきたら、物語を一文で説明させるようにします。つまり「○○の物語」にまとめさせるのです。
たとえば「(1)最初は好きではなかったが、(2)お互いの気持ちを正直に打ち明けることで、(1)最後は互いに好意を持ち始める、(3)友人(友情)の物語」というような一文ができ上がります。ここで(1)は「何が変化したか?」であり、(2)は「変化した理由」を示しています。そして(3)は「人間関係」を表しています。何回か指導すると、少しずつできるようになると思いますので「一文」も試してみてください。

……このアドバイスの結果、どうなったのでしょうか!? 続きは次回で紹介します。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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