文章を精読できません その1[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答し、実際にアドバイスを実践した結果どうなったのか?という追跡結果もお届けします。


質問者
熊本県 K・Mさん(小5男子のお母さま)
子どもの性格:おっちょこちょいタイプ
志望校:国立

第一回目の質問
文章を精読できません……
何回言っても文章を精読できません。とても速いスピードで読んで、的外れな答えを平気で書きます。どうしてその答えを選んだのか尋ねると、説明しているうちに「あ!」と自分の誤答に気付きます。丁寧にやれば理解できるはずなのに、100%の力を解答用紙に反映できません。もどかしいです。

小泉先生の第一回目のアドバイス
「丁寧に読みなさい」を具体的に指導していますか?
お母さんが「どうしてその答えを選んだのか?」を尋ねると、お子さまは「説明しているうちに『あ!』と自分の誤答に気付く」のですから、その点はまず「良くわかったね!」とほめてあげてください。自分で間違いに気が付くだけの国語力があるということです
次に、親の手助け無しで誤答に気付くようになる方法です。たとえば「精読ができない」ということで、お母さんは「しっかり読みなさい」とか「丁寧に読みなさい」と言うだけの指導をしていませんか? もしそうだとすると、お子さまはどう読めば良いのかわからないかもしれません。言い方が抽象的すぎるのでしょう。もっと具体的に教える必要があります。

たとえば「『なぜ?』をいつも考えながら、文章を読んだり問題を解いたりしなさい」と指導したらどうでしょう。つまり選択肢を選んだ時、「なぜその選択肢が正解なのかを説明できなければいけない」ということを理解させるということです。
私が生徒にこのことを説明する時は、「一人で勉強している時でも、答えを答案用紙に書くたびに、『なぜその答えになるの?』『問題文のどこに書いてあるの?』『理由を説明して』と聞いてくるような架空の人物(私はこの人物を『なぜなぜおじさん』と呼んでいます)が横に座っていると思いなさい」と指導します。
最初は「なぜ」を忘れてしまいますが、「『なぜなぜおじさん』に説明できるの?」というように常に意識させると、だんだんと「なぜ」を考えて答えを出す習慣が身に付きます。

受験の国語は「根拠」が大切です。「問題文の『ある箇所』を根拠にして答える」というのがルールなのです。そこが普通の読書と違います。読書であれば、読んでいる人が自由に作品を味わって良いのです。しかし試験問題は「答えは必ず一つ」というのが原則であり、「一つの答えしか出ないような仕組みになっている」のです。このルールの存在を理解し、答えは常に問題文を根拠に説明できなければいけないことを納得させてください。

「なぜ」を常に考えるようになれば、お子さまの国語力は飛躍的に伸びるはずです。もちろん途中で「間違えた理由を考えて、間違えた答えを出す」ということもあるでしょう。しかし「感覚で答えている」生徒とは、根本的に違うのです。初めのうちはテストの点数は同じかもしれませんが、「感覚で答えている生徒」はいくらやっても点数が安定しません。しかし「なぜ」を考えるお子さまは徐々に得点が高めに安定するはずです。もちろん誤った理由で誤った答えを出した時は、解答・解説を読んで、必ず正解、その根拠、及び解法の考え方を理解する必要はあります。


……このアドバイスの結果、どうなったのでしょうか!? 続きは次回で紹介します。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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