私立中学受験の志望校選定で重視する要素 その1[中学受験]

面白いことに「なるべく高い偏差値の学校を志望校にする」という考え方に疑問を持っている保護者は多いようなのだ。なぜなら学力以外の相談では、ほとんどが志望校に関するものであると言ってもよいくらいであるが、「偏差値だけで志望校を決定してよいのだろうか?」「我が子に合った学校を志望校にしたいが、どのように選択してよいかわからない」などというのが保護者の共通の悩みだからだ。恐らく理由はその「なるべく高い偏差値の学校」選択の前提に「我が子の学力で合格できる」という制約があることが悩ましいゆえんだろう。

私立中学受験の志望校選定で重視する要素 その1[中学受験]


私立中学受験をする子をもつ保護者にアンケートを取って、「志望校を決定する要素は何か?」「どの要素を重視して志望校を選定するのか?」についての現状を調査した。
アンケートでは、「志望校選定で、重視する要素は?(重要だと思う上位三つを記入)」の質問を行った。
志望校を決定する要素の選択肢を、「1.入試(入試問題・選抜基準・願書締切日等)」「2.学校のイメージ(志望校難易度・施設・制服・伝統等)」「3.教育サービス(大学合格実績・教育方針・校風等)」「4.立地・環境(志望校の所在地・周辺の環境等)」「5.学費(入学金・授業料・施設費等)」の5項目とした。


【表 志望校選定で重視する要素(保護者アンケート)】
志望校選定で重視する要素(保護者アンケート)

【表】を見ると、保護者が重視する要素は、全体(計)では、トップが「3.教育サービス」、2番手が「4.立地・環境」、3番手が「2.学校のイメージ」となっている。「1.入試」「5.学費」に比べ、この三つの要素は重要度が高いことがわかる。
優先順位を見ると、最も優先される要素は「3.教育サービス」(60.8%)で、2番手が「2.学校のイメージ」(18.6%)となっており、僅差で3番手が「4.立地・環境」(13.9%)となっている。2番目に重視する要素は「4.立地・環境」が最大で、39.2%になっている。つまり、半数以上の保護者は、志望校選択で最も重視するのは、学校の教育だが、次に重視するのは通学時間や学校の周辺の環境であることがわかる。
「5.学費」については、1番に優先される要素として極端に重要度が低くなっている。私学の教育を商品・サービスと考えると、「5.学費」は価格となる。経済学の観点から見ると、私学の教育は高級品で、価格を多少下げても上げても需要はほとんど変わらない弾力性のない商品・サービスと思われている。そこには規制業種ゆえの特異さがある。

半数以上の保護者が、「3.教育サービス」を1位にしているが、「2.学校のイメージ」や「4.立地・環境」を1位にしている保護者も少なくない。志望校の選択で最も重要なのは「4.立地・環境」、つまり通学時間や学校の周辺の環境である、という価値観の保護者が13.9%もいるのである。確かにそれらは可視的である。中身(=教育サービス)はそこから推して知るしかないことと割り切っているのかもしれない。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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