「わかった」が怪しい理由[中学受験]

生徒を教えている時に一番気にかかるのは、生徒が「わかったのか、わかっていないのか」ということだ。先生が一生懸命説明しても、生徒がそれを受け止めてくれない授業はむなしいものである。だから先生はつい「わかった?」と聞いてしまう。しかしこの時の生徒の反応は、なかなか怪しいものがある。
素直に「わからない」とは言わない場合があるし、生徒も自分がわかったつもりになっている時があるからだ。これは親が先生でお子さまが生徒の場合でも同じであろう。いや、その時のほうがもっと「わからない」とは言えないかもしれない。

たとえばこんな経験はないだろうか? お子さまに対する説明の「だから、ここはこうだよね」という言葉に対して、お子さまが「そうだよね。なるほど、なるほど」とずいぶん調子よく理解してくれる。しかしそのあとで同じような問題が試験に出てきても、なぜかできない。せっかく前に教えたのに、なぜできないのか? 「たまたまできなかった」とか、「忘れていた」というお子さまの言葉を信じるのだが、そんなことが何回も続く。

そんな経験のあるお母さんは、お子さまの「わかった」をもう一度確かめてみる必要があるかもしれない。本当にわかっているのだろうか? 本当はわかっていないのに、「わかったと言っている」だけなのではないのかと。もしそのような場合でも、けっしてお子さまが「ウソ」を言っているということではないと思う。そういった子は、「親の期待に添う努力」をしている「良い子」である場合が多い。良い子ほど「わからない」とは言えないのである。あるいはわかったつもりになっていて、じつはわかっていないのである。
そんなふうに考えてあげることができれば、「わかった」と言った時に「そう。ではこれはどういうことかな?」とすかさず質問できる余裕が生まれる。そんなことをすると、何かお子さまのことを疑っているようで嫌だと思うかたもいるかもしれない。しかしご両親の期待に応えたい、とにかくわかりたいという思いばかりで、結果としてはわかっていないことのほうがはるかに気の毒である。

「子どもの『わかった』はかなり怪しい」を念頭に、それではチェックしてみようという心がけが、生徒の完全な理解を可能にする。学習の効率を上げるためにも必要なことだから、指導するものは常に心がけたい。
チェック方法はいくつかあるが、一つには「理由を言わせる」というのがある。たとえば国語で選択肢問題を教える時、まずは解き方である「消去法」を十分に教える。次になぜ選択肢のアが消去できるかも十分に教えたとしよう。そしてお子さまが「わかった」と言えるまでに理解したら、すかさず「それではイがなぜ不正解か理由を説明してごらん」と言うのである。ここで本文を根拠にした説明ができれば、少なくとも消去法のやり方は理解したと言える。ここまでくれば、次のテストでの選択肢問題の正答率がぐっと上がるであろう。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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