再び学校選びの観点について 宗教立別-その3[中学受験合格言コラム]

鎌倉仏教の系列では、男子校では時宗の藤嶺学園藤沢中学校・高等学校(神奈川)、臨済宗の鎌倉学園中学校・高等学校(同)、曹洞宗の世田谷学園(東京)、女子校では浄土真宗の千代田女学園(東京)や武蔵野女子学院中学校・高等学校(同)、浄土宗の淑徳グループなど、挙げていけばかなり多い。さすがに庶民に信仰を広めた鎌倉期の仏教運動の所産と言える。

これに先行した平安仏教の真言宗では宝仙学園中学・高等学校(東京)、天台宗では駒込学園(同)があるが、やはり広報宣伝の勢いは伝統なのか鎌倉仏教系の学校が概して熱心。もっと言えばこれらの教団立よりも創価学園(東京)や佼成学園(同)のような信徒団体立のほうが、宗教的精神の育成に積極的に見える。
これは宗教をはずれても一つの真実で、たとえば共通点が多い学校同士でも国立のお茶の水女子大学附属(東京)よりも私立の桜蔭中学校高等学校(同)、東京都立白鴎高等学校附属中学校(同)よりも鴎友学園女子中学高等学校(同)のほうがその建学の理念への思いが強そうであることと似ている。

とはいえ、ついに一世代前どころか、十年一昔前であれば親の世代に残っていたはずの仏教的生活の彩りが、今やまるで見かけなくなっているのは衆目の一致するところだろう。仏壇にお供えをする、というようなそのころの日常的な光景が今の時代の家庭では既にすたれているし、第一念仏をそらんじることのできる親が何人残っているものだろうか。

その意味では仏教の将来も心もとない状況にはあるものの、あのフランシスコ・ザビエルが感嘆したと言われる日本人の理性の高さの素地は、こうした仏教文化によってつとに培われてきたことは疑いようもないことだろう。

身近な経験では、世田谷学園の中興の祖と目された故山本慧彊校長のたびたびの時務的論評は舌峰鋭く、仏教徒に身に付いた論理性や大系的知性をまざまざと見せ付ける説法だった。

この例に見るように、僧籍にある校長先生にリーダーシップがある場合、その説話はやはり起伏に富み、発声もよく、高い精神性を備えていて、まさに心の教育になるとともに、何より学校の発信力が大きい。それは生徒の勇気付けに効果的だ。

とはいえ実際の話として、キリスト教系の学校と同じく、僧籍をもつ教師も少ないが、何より学校経営に向いている方々となるとさらに少ない。信徒であれば僧でなくてもよい、というのが今の仏教系の学校の通例だ。
そうしたなかで、洛南高等学校附属中学校(京都)で梅原猛氏が仏教について授業し、本(※注)になったことを思い出す。そもそも仏教は、近世まで知識層の倫理学であり哲学であったわけだが、梅原猛氏は、しかしそれを中学生に向けてわかりやすく面白く語っておられ、さすがにわが国の文化的資産をもっともよい形で若い知性に伝えている、という意味で貴重な試みだと思うのである。

※注:『梅原猛の授業 仏教』(朝日新聞社)

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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