私立批判はタブー?[中学受験]

先日、ある月刊誌で中学受験の座談会出席を頼まれた。お相手は他に4人で旧知のかたばかりである。ただ編集部としては単に中学受験の話題を取り上げるのではなく、有名中学校についてさまざまな角度から論じてほしい、ということだった。筆者の発言に関して言えば、中学受験そのものもさることながら中学校に入ってからのことがやはり大事だ、と。幸い男女御三家の生徒ばかりが通うような数学と英語のスーパー塾のスーパー先生が相方のお一人だったので、まことに難関中学校といえども男子校は英語、女子校は数学がお寒い限りですね、と水を向けたところ、スーパー先生はさすがに事情を良く知っておられて、いかにそれが残念な様子であるか、ということを具体的にお話しくださった。

筆者は我が意を得たり、であったが、出席者の一人である大手塾入試情報センターのかたが、確か、そんな私立の教育が悪いなどということは、中学受験大手の塾としては口が裂けても言えません、ときっぱり言い切ってその場の笑いをとった。さもありなんと納得したことだった。さすがにそこはご商売で返す刀で、埼玉の栄東や開智のようなところは、英語も数学もきちんと教えていますね、と早速手をかえ品をかえ私立中学校の良さを宣伝してやまない努力には文字通り敬服した。

我が国というのはとてもおもしろいと思うのだけれども、自由な言論を許されている建前ではあっても、長く農村社会に暮らしてきた知恵なのか、その場ではモノを言わない、言ったとしても何も言わないのと同じようなことを言っているケースが多いと改めて気付かされる。つまり中学受験の場で私立中学校批判はタブーのようなのだ。

たとえば筆者が公立小のPTA会長を1年だけおおせつかって卒業式や入学式に出席したときのこと、偉い方々のお話しくださる内容は、もうほとんどが慣用句の羅列で建前ばかり。情熱をともなった言葉が見つからない死の言語空間であるのに気付かされて大変びっくりした。

余談ながら、小泉前首相のあれほどの人気は、筆者など理解を超えるところはあるけれども、その大きな要因は自分の言葉でそれこそ政治家特有の言語明瞭意味不明な言い回しを一切しなかったことが大きいのではないだろうか。

中学受験にしても事情は同じで、私立中学校の評価についてそのすべてがすばらしいというような言語空間が、ともすればできがちな点を気を付けねばならないことだ。

とりわけ関東の場合、関西と違ってあまり言葉のジャブを楽しむということがない。しかしそのかわりにユーモアで包んで皮肉を言うというお家芸があるので、中学受験の先にある私立中学校の実態についてももう少しタブー視せずに語りたいものだ。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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