英語教育の充実、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)でも

次期学習指導要領をめぐる中央教育審議会での議論が、年内の答申に向けて、いよいよ大詰めを迎えます。大きな目玉の一つが、英語教育の充実です。改訂を待たず、今から英語の授業の改善を、いっそう進めることが求められます。そのため、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、2019(平成31)年度から3年に1度、中学校で英語を出題する方向性が固まっています。最初の対象学年は、現在の小学6年生になる見通しです(2回目は現在の小3)。

「話すこと」は学校の先生との対話で

英語の授業をめぐっては、現行の指導要領でも「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」の4技能をバランスよく育成することを目指していますが、実際には、ペーパーテストを中心とする高校・大学受験などの影響もあって、「話すこと」「書くこと」の指導が十分ではないことが課題になっています。

そこで文部科学省の専門家会議では、義務教育の最終段階である中学3年生の英語4技能を測定する、全国的な学力調査を実施する方針を打ち出しました。全国学力テストでは、国語と算数・数学に加え、2012(平成24)年度から3年に1度、理科が実施されていますが(次回は18<同30>年度の予定)、このサイクルに英語も加えようというわけです。

具体的には、国語や数学と同日程で、「聞くこと」「読むこと」「書くこと」について、45分程度のテストを行います。解答形式はマークシート式の他、「書くこと」では記述式も取り入れます。

残る「話すこと」は、後日、各学校の先生が、生徒一人ひとりと10分程度の対面によって実施し、採点します。これには、全国一括の実施・採点が難しいというだけでなく、調査を担当する先生自身に即、授業の改善につなげてもらいたい意図も込められています。統一的な評価の質を確保するためにも、事前に十分な研修を行うことにしています。

「何ができるか」重視へ

次期指導要領では、小学校高学年の英語を教科化するとともに(現在の「外国語活動」は中学年に前倒し)、中学校では、現在の高校と同様に英語で授業を行うことを基本とする方向で、検討が進められています。4技能を一体的に、繰り返し指導することによって、実際に英語を使って他者とコミュニケーションができる力にまで高めることを目指したい考えです。

全国学力テストの英語でも、そうした英語教育の課題や改善の方向性を踏まえて、知識・技能を実際のさまざまな場面で効果的に活用する力を問うことにしています。国語や算数・数学のようにA問題(主に知識)とB問題(主に活用)に分けて出題することはせず、一本とすることは、理科と同じです。

4技能を問うテストは、大学入試センター試験に替わって2020(平成32)年度から導入される「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」(対象は現在の中学2年生から)でも、民間の資格・検定試験を活用するなどして、導入される方向性が固まっています。

子どもたちが社会に出るころには、今以上に、多くの人が仕事などで英語を使うようになることは確実です。そんな時代に備えて、「英語を使って何ができるようになるか」に向けた授業改善が、一刻も早く求められます。

※全国学力・学習状況調査における中学校の英語の実施に関する中間まとめ
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/detail/1372387.htm

※次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめについて(報告)=外国語を含んだ部分
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/09/09/1377021_1_5.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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