文法や単語の知識を活用して、「英語」が使えるようになるための心がけとは?

英語を身につけるために大切なことというと、保護者の皆様は何を思い浮かべますか? 文法や発音、単語……と、大切なものはたくさんありますよね。ただ、そもそも英語に興味がなければ、英語を学ぼうという気持ちが湧きにくいでしょうし、無理に取り組まされれば英語を嫌いになりかねません。そのため、まずは英語を好きになる必要があるでしょう。

小学5・6年生では、2011年度から「外国語活動」が必修化されています。「外国語活動」を通して多くの子どもが英語を好きになっていることが、ベネッセ教育総合研究所が実施した「小学校の英語学習に関する調査」から明らかになりました。ベネッセ教育総合研究所・グローバル教育室室長の加藤由美子氏がその調査結果を基に、「外国語活動」の英語学習における意義やこれからなどについてお話しします。


【英語を学ぶ心がけ1】「使ってみたい」と思うからこそ、英語を学ぼうとする

 今回の調査では、小学5・6年生の約6割が「教室の外で英語を使ってみたい」と答えました。現在の日本では、日常生活で英語を用いる必要性はほとんどありません。それでも、教室の外でも「英語を使ってみたい」と思う子どもが半数以上いるわけです。

 

さらに、「英語がわかったり通じたりすると楽しい」「英語の授業に一生懸命取り組んでいる」という回答も8割以上。多くの小学5・6年生が英語に興味をもち、英語を使うことを楽しんでいる様子がうかがえます。
こうしたことから、英語の音声に慣れ親しみ、英語によるコミュニケーションへの関心や意欲などを育むという、「外国語活動」の目的は、達成されているといえるでしょう。

 ※「小学校の英語学習に関する調査」より 11項目の設問中、上位7項目を抜粋

 ※「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の%

 ※「学校では英語の授業や活動はありますか」について、「ある」と回答した人のみ

 

また、「教室の外で英語を使ってみたい」と思う子どもと「教室の外で英語を使ってみたい」と思わない子どもを比較してみると、「教室の外で英語を使ってみたい」と考える子どもほど、英語に関するさまざまな意識が前向きであることもわかりました。

 

例えば、「教室の外で英語を使ってみたい」と思う子どもは、「中学校で英語を学ぶことが楽しみだ」は80.2%、「外国の人と友だちになりたい」は84.8%で、「教室の外で英語を使ってみたい」と思わない子どもより40ポイント以上高い結果になりました。さらに、「英語を使った仕事をしたい」「日本の文化を外国の人に紹介したい」「英語の音やリズムがおもしろい」など、30ポイント以上の差がある項目も。

 

「使ってみたい」という気持ちは、言葉を身につけるために欠かせない、最も基本的なモチベーションです。これを「外国語活動」がしっかり育んでいるからこそ、言葉によるコミュニケーションや言葉の学習などにも積極的に取り組むようになるのではないでしょうか。

 

一方、保護者の回答では、「『外国語活動』に満足していない」が約6割。「小学校での英語教育に望むこと」についてたずねたところ、小学校での英語教育に満足している層としていない層で差が大きかったものは、「子どもが英語力の基礎を身につけること」「中学校での英語学習がスムーズになること」「英語を聞いたり、話したりすること」などがありました。「外国語活動」では、「聞く」「話す」を中心に子どもが楽しみながら英語に慣れ親しむ活動を行います。それは保護者が中学・高校で受けた英語の授業と違うので違和感を抱くかたも、いらっしゃるでしょう。

 

しかし、中学・高校の英語の授業と「外国語活動」では、目的が違います。中学校では、「聞く」「話す」「読む」「書く」というコミュニケーション能力の基礎を、また高校では、情報や考えなどを適確に理解したり、適切に伝えたりするコミュニケーション能力を育成することを目指しています。だからこそ、そのために必要な文法や単語の学習にもしっかり取り組み、活用できるようにするのです。

 

目的が違えば、活動の内容も違ってきます。小学校の「外国語活動」でも、「聞く」「話す」のなかで文法や単語は使いますが、中学校以降の学習のように、それらだけを取り出して理解したり、覚えたりはしません。先ほどもお話ししたように、それらを「聞く」「話す」の中でうまく使いながら、身につけていくのです。たくさん使う中で、もっと使ってみたいという気持ちが生まれてくるのだと思います。

 

 


【英語を学ぶ心がけ2】体を動かし、楽しみながら英語にふれられるようにする

 小学5・6年生に「外国語活動」でしている活動をたずねた設問では、「英語のあいさつ」という回答が94.3%でトップ。「英語のゲーム」「英語のことば(cat,appleなど)を言う練習」「英語の発音練習」「短い文や質問を英語で言う練習」が70%以上で続き、「英語の歌やダンス」も69.1%という結果が出ました。先ほどお話しした「外国語活動」の目的に合った、英語の音声に楽しく慣れ親しむ活動が重視されていることがわかります。

 

小学校の外国語活動の授業実践では、お子さまが楽しみながら主体的に参加できるような工夫も見られます。例えば、「英語の発音練習」では、ただ発音するだけでなく、リズムに合わせて行われることが多いです。メロディーやリズムとともに英語にふれることで、お子さまは英語の音声の特徴もつかみやすくなるでしょう。同じ理由で、「英語のゲーム」「英語の歌やダンス」も多く行われているのです。

 

 ※「小学校の英語学習に関する調査」より 17項目の設問中、上位12項目を抜粋

 ※「いつもしている」+「時々している」の%

 ※「学校では英語の授業や活動はありますか」について、「ある」と回答した人のみ

 

 

「外国語活動」に対して、「ただ遊んでいるだけ」といったイメージをもつ保護者のかたがいらっしゃるかもしれません。確かに、「外国語活動」には、遊びに見える活動が多く取り入れられています。しかし、それは英語に対するお子さまの興味を引き出し、お子さまが心や体を動かしながら、楽しく英語にふれられるようにするための活動です。
また、そうした活動を通して、「教室の外で英語を使ってみたい」「英語がわかったり通じたりすると楽しい」「英語の授業に一生懸命取り組んでいる」と感じるようになるお子さまが多いのですから、行う意義が非常に大きいこともおわかりいただけるのではないでしょうか。

 

行われている活動の中で、「意味をやりとりする」というコミュニケーションを強く意識した活動である「自分の考えや気持ちを英語で話すこと」は56.2%と、上記の英語の音声に慣れ親しむ活動に比べると比率がダウンします。英語で意味をやりとりすることは、英語を、意味をやりとりする「ことば」として意識し、使う相手を意識して、大切に使う気持ちを育てます。そういう意味では、英語の音声に慣れ親しむことにとどまらず、もっと「言葉」として行われるようになることが期待されます。

 

そこで、ご家庭でもお子さまに次のよう働きかけをしていただきたいと思います。例えば、「外国語活動」の活動内容などをお子さまにたずね、お子さまが少しでも自分の気持ちを英語で言えたら、「すごいね!」と褒めてあげてください。文法の正しい英文を完璧に言える必要はありません。単語だけでもOKです。英語で気持ちを伝えようと頑張るお子さまの姿勢を、褒めてあげましょう。
自分の言いたいことがおうちのかたに伝わったことがわかれば、お子さまはそれまで以上に英語が好きになり、「もっと使いたい」「使えるようになりたい」という思いを強くするでしょう。

 

 


自分の世界を広げるために英語を学ぶ

 何のために英語を学ぶのか——。そう聞かれたら、保護者の皆様は何とお答えになるでしょうか。「受験や就職に役立つ」「留学するのに必要」など、人によってさまざまな答えがありますよね。
受験や就職も大切ですが、外国語を学ぶ最も本質的な意味は、多様な他者との交流を通して視野を広げ、価値観を豊かにできることではないでしょうか。つまり、自分の世界を広げるツールとして英語を学ぶわけです。そう考えると、英語を使って交流することの楽しさを、お子さまが身をもって感じられる「外国語活動」は重要な役割を果たしています。中学校で本格的な学習に入る前の段階で、しっかり取り組む意味があります。

 

ただ、5・6年生であれば、もう少し発展的な活動に取り組んでもよいでしょう。そこで文部科学省は、2つの改善を検討しています。1つは、「外国語活動」を行う学年を現在の5・6年生から3・4年生に前倒しすること。もう1つは、5・6年生に「外国語活動」に代わって、「読む」「書く」の学習なども取り入れた新たな教科(外国語科)としての教育を導入することです。
改善が実現すれば、中学校英語との接続は今まで以上にスムーズになり、文法や単語の学習が本格化してからも「教室の外で英語を使ってみたい」という意欲をもち続けられるお子さまが、きっと増えるでしょう。

 

 

小学生の英語学習に関する調査の詳細についてはこちら

http://blog.benesse.ne.jp/bh/ja/news/m/2015/11/05/docs/20151105release.pdf

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