増える英語で授業、国立大で4,000科目以上に

現在の教育改革、特に大学教育の改革においてグローバル化対応は急を要する課題になっています。国立大学協会がまとめた調査の結果によると、主に英語のみで授業を行う科目が国立大学全体(学部)で4,000以上あることがわかりました。ただ、外国人教員の割合や外国人留学生の数などの伸びは依然として低く、国立大学の国際化への道はまだ遠いといえそうです。

以前に紹介しましたが、国立大学で組織する国立大学協会は2013(平成25)年3月、国立大学の国際化を推進するため、東京五輪・パラリンピックが開催される2020(同32)年までに実現すべき数値目標(外部のPDFにリンク)を定めました。その後、数値目標の進捗状況を把握するため毎年フォローアップ調査を実施しています。2014(同26)年11月現在の進捗状況を調べた第2回調査によると、日本語を使わず英語だけで授業をする科目を設けている国立大学は、学部が82校中62校、大学院が86校中70校でした。英語で授業をする科目は、学部段階で2012(平成24)年度が3,711科目(一部語学としての授業を含む)、2013(同25)年度が2,510科目、2014(同26)年度が4,075科目、また大学院では2012(同24)年度が8,068科目、13(同25)年度が1万936科目、14(同26)年度が1万2,796科目と増えています。しかし、学部・大学院合計で2014(同26)年度は1万6,871科目となりますが、数値目標では2020(同32)年までに学部・大学院合わせて2万3,700科目程度としているため、あと5年間で6,800科目以上増やさないといけない計算です。

また数値目標では、2020(平成32)年までに外国人留学生の割合を学生全体の10%、日本人学生の海外留学者を学生全体の5%としています。これに対して外国人留学生の比率は、2012(同24)年5月が5.8%(学部2.2%、大学院16.0%)、2013(同25)年5月が5.6%(各2.1%、16.0%)、同11月が6.1%(各2.4%、17.4%)、2014(同26)年5月が5.8%(各2.4%、15.8%)、同11月現在は6.3%(各2.7%、17.0%)でした。このままの伸び率では、2020(平成32)年までに外国人留学生の割合を10%にするのは難しそうです。一方、日本人学生の海外留学者の割合は2011(同23)年度が2.2%(各1.9%、3.0%)、2012(同24)年度が2.9%(各2.3%、4.4%)、13(同25)年度は3.0%(各2.6%、4.4%)となっています。日本人学生の海外留学の数値目標達成は、文部科学省が官民恊働による海外留学プログラムなどをスタートさせたこともあり、2020(同32)年までにぎりぎり間に合うかもしれません。

大学の国際化のバロメーターの一つとなる外国人教員の割合について、数値目標では6.4%程度にすることを目指すとしています。しかし国立大学教員(本務者)に占める外国人教員の割合を見ると、2012(平成24)年5月が3.2%、2013(同25)年5月が3.4%、2014(同26)年11月が3.8%と推移しており、依然として3%台にとどまっています。2020(同32)年までに数値目標を実現するのはかなり厳しいようです。また、国際的な大学入学資格である国際バカロレアの成績を大学入試で活用するのは82校中19校(うち予定8校)となっています。

このように国立大学の国際化は少しずつ進んでいるものの、いまひとつスピードに欠けるというのが実情のようです。


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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